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明治大商学部教授 水野 勝之(千葉県浦安市)

【略歴】 千葉県出身。早稲田大大学院修了。商学博士。北九州大助教授を経て、明治大商学部教授。明治大では、嬬恋村など複数の地域連携事業の責任者を務める。

社会人の学び直し

◎再チャレンジを促す

 私の勤務する明治大学は文部科学省の二○○七年度「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」に採択されました。その内容は、社会人の再チャレンジを支援するという社会ニーズを反映した、学び直しのための実践的教育プログラムを開発・実施することです。明治大学で採択されたプログラムのコンセプトは、社会に役立つことをあきらめていたり、気づいていなかったりする人たちに、社会で活躍することに目覚めてもらおうというものです。

 発想の原点は「あらゆる人は、生涯にわたって活躍できる」という考え方です。つまり、先に述べた人たちに対して、実は社会の中で十分役割がある、という認識を広め、積極的、能動的に活躍してもらうことです。これは、これまで自治体も民間もなかなか手をつけられなかったことで、新しい大学の公共的な役割を果たしていこうというものです。

 そのプログラムの一環として、嬬恋村で講座を開催しました。題して「農業による観光振興を推進する地域リーダー育成プロジェクト―<嬬恋アグリカレッジ>の開校を目指して−」。嬬恋村の農業は、長い間火山と共生しながら行ってきました。これを、地元の方々は当たり前だと思っていますが、他の地域から見ると、その技術力の高さ、精神力の強さは学び、見習いたいモデルなのです。それを伝える人材を育成する、というのがこの講座の目的でした。昨年十一月から五カ月間の講座で、受講者は二十五人でした。

 講座では、受講生を展示会班、農業体験班、嬬恋アグリカレッジ班、新ブランド開発班の四グループに分けました。明治大学からは、商学部、経営学部、農学部の先生方にご指導いただきました。展示会班は、明治大での展示会を企画・実現し、農業体験班と嬬恋アグリカレッジ班は農業体験企画をして、嬬恋村定住を促進する提案などをしました。なかでも、新ブランド開発班は、ジャガイモから片栗粉を作る際に残るくろこ(KUROCHO)の商品化や、用途別にキャベツの種類分けを行うといったことを提案し、なんと、くろこを明治大農学部で成分分析した結果、繊維質が95%もある健康食品であることが判明して、商品化の道筋が見え始めています。

 これらの成果は、ブックレットにまとめられ、三月の報告会で発表されました。そして、受講者の方々は「好きです 嬬恋」というNPOを立ち上げ、今後、提案を実行に移していきます。この講座は、受講者の皆さんが嬬恋村の良さを再発見し、さらに嬬恋村を良くしていく活動が始まるきっかけとなり、まさに「あらゆる人が、生涯にわたって社会で活躍できる」ステージを「自ら」つくりだしたケースとなりました。






(上毛新聞 2008年5月4日掲載)