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◎紛争避ける道しるべ 法律に従って紛争を解決する社会を実現するという触れ込みで、政府は法曹養成制度を改革し、司法試験合格者数を増やしてきた。二〇〇七年の司法試験合格者は、二千百一人となり、昭和の時代と比べると四倍強の増員である。 質の低下を理由とする増員反対論も強いが、弁護士の使命が、基本的人権の擁護と、社会正義の実現であることからすると、弁護士の増員の結果、より一層人権が擁護され、社会正義が実現する理屈になるから、その限りで市民にとって歓迎すべきことではある。 ところで、弁護士の職務は、一般的には、法律を武器に、窮地に陥った人を助けることにある。しかし、言うは易(やす)く行うは難し、ということも多い。例えば、「頼まれて連帯保証人になったが、本人が支払わないので債権者から請求を受けている」という相談を受けた場合、連帯保証をなかったことにするのはたいてい不可能である。連帯保証人の責任は重く、その仕組みを前もって知っていれば、気安く判子(はんこ)を押さない場合もあるだろう。 これは、ごく簡単な例であるが、私たちの周りには、将来の紛争の種を含む約束事がたくさんあるし、契約をしない商売というのはあり得ない。諸事事前検討して、将来の紛争を避けるのが賢いやり方である。 ことが健康の話となると、われわれには「病気にならないようにする」という意識が身についた。健康診断の受診は当たり前のことになったし、病気の予防策についての関心も非常に高い。備えあれば憂いなしであるが、実は、法律の世界も全くこれと同じことがいえる。 欧米には弁護士がたくさんいるが、皆がトラブルの事後処理をしているわけではない。トラブルが起きないように契約を取り交わしたり、何かことに当たる場合の法的なアドバイスを業務にしている弁護士も多い。つまり、予防医学があるように、予防法学というものがあるわけだが、日本ではこの点の意識がまだまだ薄い。「病気」になってから、弁護士に相談する人が多いのである。 勿論(もちろん)、弁護士側のPR不足も一つの原因ではあるが、市民の側も、そろそろ紛争の予防ということに関心を持つ必要がある。法律には、将来のトラブルを避ける道しるべの機能があり、使いこなす意義は多い。 この情報化時代に、弁護士についての情報が取れないということも少ないはずである。気になることがある場合には、早めの「法律診断」をお勧めする次第である。 (上毛新聞 2008年4月12日掲載) |