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特定社会保険労務士 山田 悟史(太田市成塚町)

【略歴】 1977年に社会保険労務士になり、98年から山田社会保険労務士事務所長。県社労士会理事、日本年金学会員、司法委員、調停委員(民事・家事)、新田史研究会事務局長。

年金

◎教科として学びたい

 平成X年Y月Z日。今日は、年金学園の卒業認定試験日。現場から実況中継でお伝えしましょう。

 「いま私(字幕で年金太郎と出る)は、年金学園の前に立っております。朝八時開始の試験に向け、七時からゾクゾクと受験生が押し寄せています。インタビューしてみましょう。

『あなたは何年生?』

<小六です>

『夕べは眠れましたか』

<ええ、ぐっすり>

『あなたは何年生ですか』

<大学四年です>

『調子はいかがですか』

<夕べは一睡もしてません…>

 ご覧のように、反応はさまざまです。大勢の受験生がなだれ込んできています…」

 年金学園は、小・中・高・大の年金教育一貫校です。卒業一カ月前にそれぞれの卒業生に年金試験を行い、合格者のみ卒業、不合格者は最悪の場合、留年となります。合格点は六十点。不合格者には追試があり、その合格点は七十点に。それにも落ちるとハードルはさらに高くなり、八十点に。三度目に落ちると「仏の顔も…」で、もう一年居残ることが決定します。

 そのため受験生は三カ月前から昼夜を分かたず机に向かって準備の毎日。年金塾、年金ゼミは大繁盛。社会保険労務士はモテモテ。

 それではその試験問題を眺めてまいりましょう。読者の皆さま、挑戦です。

 【小六の問題】

 「年金学園を二十二歳で卒業。厚生年金に加入し、働き続けて六十五歳で退職。四十三年間の平均給料は三十万円とする。この人の年金額を筆算で求めよ」

 【中三の問題】

 「(1)小六の問いに答えよ(2)その四十三年間の累計保険料を筆算で求めよ」

 【高三の問題】

 「(1)小六と中三の問いに答えよ(2)四十三年間の保険料と平均余命までの年金受取額の相関式を求めよ」

 【大四の問題】

 「(1)小六から高三までの問いに答えよ(2)百年後の社会情勢を予見し、百年あんしん年金財政を原稿用紙三枚にまとめよ」

 いかがでしょう。易しくありませんね。さらにユニークなのは、この学園の卒業後。卒業生に保険料未納者はナシ。また、六十五歳を迎えると年金ポイント制が待つ。小・中・高・大の合格点数に応じ、ポイント加算があり、六十五歳からの年金額が最大10%増になる。これを「ポイント加算年金」と呼びます。

 以上が筆者の予想する未来です。学校生活の中で年金が正規の科目となり、そして試験もある。国語、社会、算数から数学、さらに経済に至るまで、いろいろな視点で年金について学ぶチャンスをつくること、それが肝要と考えます。

 平成X年Y月Z日。その日が訪れると、信じます。






(上毛新聞 2008年4月9日掲載)