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足尾に緑を育てる会会長 神山 英昭(栃木県日光市足尾町)

【略歴】 栃木県旧足尾町(現日光市)生まれ。法政大卒業後、町役場に勤務。産業観光課長、税務課長、住民環境課長を歴任した。在職中に「わたらせ川協会」を設立している。

渡良瀬川源流

◎流域住民が共同植樹

 利根川の一大支流「渡良瀬川」は栃木県日光市足尾町の皇海山に源を発し、本県みどり市、桐生市、栃木県藤岡町で渡良瀬遊水地を経て、茨城県古河市で利根川に合流しています。

 その流路延長は百七キロ。

 流域地域の飲料水、農業用水、工業用水に利用され、恵みの川として親しまれてきました。

 その恵みの川もかつては、足尾銅山から出る鉱毒水が大洪水の時季に田畑に流れ込み、農作物に甚大な被害をもたらしました。さらに上流地域においては、煙害の影響で製錬所近傍の山々が荒廃し、裸地化してしまいました。いわゆる「足尾鉱毒事件」として歴史に刻まれました。

 これらのことから、いつとはなしに下流地域は被害地、上流地域は加害地という意識が持たれるようになってしまいました。しかしながら、これまで交流もなかった上流と下流の市民グループが協議し、共同で足尾の山の緑化活動を始めました。

 足尾鉱毒事件と闘った田中正造にとっても、日本の近代化に貢献した古河市兵衛にとっても、はげ山の再生は願っていたことに違いありません。

 いま、二人とも黄泉(よみ)の世界で「後世の連中、頑張っているな」とほほ笑んでいるのではないでしょうか。

 これまで十二回の植樹デーを実施してきましたが、参加者は延べ八千三百人、植えた苗木が三万五千本。

 昨年六月、ドイツで開かれた主要国首脳会議で地球温暖化対策について協議され、十二月には、気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)がインドネシアのバリ島で開催されました。

 さらに今年の七月、北海道で洞爺湖サミットが予定され、わが国はその議長国として積極的な地球温暖化防止対策を講じることが求められることになります。

 地球温暖化防止対策は、全人類が取り組む共通の課題です。その中でも二酸化炭素(CO2)削減は喫緊の課題です。

 国および地方自治体、産業界、流通業界、学校、家庭など国民全体で創意工夫しながら、その削減に取り組んでいるところです。

 特に、森林はCO2を吸収するとともに、水質浄化、土砂災害防止など、多くの機能を有します。地球温暖化防止の対策として植樹は有意義なことといえるでしょう。

 地球環境を守るためにも、渡良瀬川流域の人々の生活を守るためにも、渡良瀬川源流の森づくりは欠かせない、重要な作業です。

植樹活動は、流域住民に多くの恩恵をもたらします。これからは上流から中流、下流の人々が源流に集い、汗を流してくれることを期待しています。






(上毛新聞 2008年4月6日掲載)