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県読書グループ連絡協議会会長 長  京子(桐生市新宿)

【略歴】 前橋女子高、群馬大学芸学部を卒業。結婚を機に1964年に桐生に移り住む。桐生市読書会連絡協議会を皮切りに婦人会などで活動している。

新エネルギー

◎家庭や地域で考えよう

 「桐生市地域新エネルギー策定委員会」に市民代表として婦人会から出席した。初会合は昨年九月。会合ごとに分厚い資料が送られてきて、解説用語集と首っ引きで目を通して臨む。

 新分野のエネルギーを、どうまちづくりに取り入れていくかという会議だった。「石油に代わるエネルギーの話」ほどの軽い気持ちで出席したが、新エネルギーと定義されるものがいろいろあるのに驚かされた。

 トウモロコシから作る燃料、屋根の上の太陽光発電パネル、養豚場などの畜産排せつ物バイオマスエネルギー、食用廃油から作るディーゼル燃料などが、テレビなどで紹介されている。みな新エネルギーだ。ちなみに今まで使われている水力発電、火力発電などは新エネルギーには入らない。

 委員会でアンケートをとったことがある。目についたのは風力発電だった。群馬は空っ風の吹く土地柄であるせいか、参加者の誰もが有効なエネルギー源と思ったことだろう。ところが、恒常的に適度の風が吹かないと採算に合わないのだそうだ。視察に訪れた吉岡町の風車は「シンボル的なもの」と説明された。実際には群馬では不適当だという。言われてみれば、暑い夏の日は風が死んでいる。

 桐生市は、ごみ処理場での発電や温水プールなどへの廃棄物エネルギーの活用をはじめ、動植物由来の有機物を活用したバイオマスエネルギー、市民が参加しやすい食用廃油を使ったバイオディーゼル燃料など、既に利用しているものも含めた「新エネルギービジョン」を今年になって策定した。

 委員会を通じて、群馬は日照時間の長い県なので「力を入れるのは太陽光発電」と素人ながら感じている。コストはかかるが、太陽光発電を利用する家屋が見られるようになった。小学生のころ、冬の寒い教室で太陽が恋しくて、早く席が窓側に変わらないかと願っていたのを思い出す。

 人間の英知は夢のようなことを実現してきた。燦燦(さんさん)と降り注ぐ太陽の暖かさを自在にエネルギーとして活用できるかもしれない。昼間の暖かさを容器に閉じ込め、夜使えたらすばらしい…。テレビで紹介されたエネルギーを蓄える一枚の“瓦”が、少女時代のそんな願いを現実に変えていく。

 地球温暖化を考える報道の中で、地球を四十周もする農業用水路はミニ水力発電に活用できると提起していた。東南アジアの畜産排せつ物バイオマスエネルギーで電気を得ている映像も流れた。

 新エネルギーで日本のエネルギーがすべて賄えるようになると楽観はしていない。でも、私たちの家庭生活からエネルギーについて考える習慣が芽生えることは大切だと思っている。将来の地球をイメージしながら、地域の仲間と真摯(しんし)に考えていきたい。






(上毛新聞 2008年3月31日掲載)