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美原記念病院看護部長 高橋 陽子(伊勢崎市宮子町)

【略歴】 伊勢崎高等看護学院卒。美原記念病院に入り、2004年から看護部長を務めている。06年からは伊勢崎敬愛看護学院で在宅看護論を教えている。

医療計画

◎血栓溶解療法の充実を

 来月一日からの実施を目指し、県が中心となって「医療計画」の策定が進められてきた。

 「医療計画」とは、医療法に基づき、四疾患(がん、脳卒中、急性心筋梗塞(こうそく)、糖尿病)および五事業(救急医療、災害時医療、僻地(へきち)医療、周産期医療、小児医療)に関して、急性期医療、回復期のリハビリ、維持期のリハビリ、在宅療養を担う医療機関をそれぞれ明確にした上で、これらの連携体制を構築し、地域の人々に広報することにより地域の中で質の高い医療が効率的に提供される仕組みをつくろうというものである。

 四疾患は、予防の必要性が強く求められている生活習慣病と関係が深く、五事業とは、病院医療の崩壊が叫ばれる分野を反映している。

 すなわち、今日のわが国の社会情勢を鑑(かんが)みて、国民の生活の質向上に大きな影響を与える重要な政策であると思われる。

 私は、脳卒中の専門病院に勤務している関係上、脳卒中に関する、素案と中間報告書を見る機会があった。

 「医療計画」では、脳卒中の急性期医療に関しては、脳梗塞の発症後三時間以内に限って実施される血栓(けつせん)溶解療法(t―PA)が重要なポイントとなっている。

 発症後三時間以内に血栓溶解剤を投与するためには、症状の発見から、投与まで迅速な対応が求められる。そのためには、病院到着までの救急隊の適確な対応、病院の適確な初期対応(専門医師の迅速な診察、多職種との連携、ハード面の整備等)が確実に行える体制(教育も含む)が不可欠である。

 当院は、地域の人々の脳卒中を担う専門病院として体制整備を行ってきた。

 そうした取り組みの結果、t―PAによる治療実績も多く、何よりも患者が後遺症を残さず退院する姿は、私たち看護師のエネルギー源となっている。

 「全然、動かなかったのに…こんなに動くようになった」という患者や家族の言葉、あるいはまた、現場の看護師から「(画像を見ながら)血管が生えた!」などの言葉をよく耳にし、看護管理者として大変うれしく思う限りである。

 地域の人々が的確な診断・治療を受け、後遺症を残さず退院するための体制は急務である。

 そのためには、t―PAが可能な病院を中心とした圏域を設定することが重要だといえる。県内のどの地域でも、等しくこの治療が受けられるようにすることが求められているのである。

 「医療計画」が地域の人々の視点に立ち、地域の実態に即したものであってほしい。質の高い、効率的な医療が提供される体制を構築されることを期待したい。






(上毛新聞 2008年3月24日掲載)