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音楽家 松本 玲子(前橋市若宮町3丁目)

【略歴】 大阪府出身。同志社大文学部卒。電子オルガン奏者として国内外で活躍する一方、創造学園大で准教授を務める。2005年度から県文化行政懇談会委員。

群馬の森

◎極上空間をより面白く

 本年度も県の文化行政懇談会に参加させていただいた。この会は県教育委員会が、所管する文化に関する業務について、民間の意見や経営感覚を取り入れ、自由な発想のもと、幅広い観点からの助言や提言を得るため、二〇〇五年度から設置された懇談会である。本年度は十三人のメンバーで「群馬の森」をテーマに話し合った。今月七日付本紙一面に「群馬の森から誘導を」という見出しで報道されたので、ご覧になった方もおられるだろう。

 ところで、みなさんにとって「群馬の森」はどういう存在なのだろうか。県外出身の私は群馬の森を初めて訪れた時、豊かな自然環境と、ほどよく手入れされ、ゆったりとした空間に心癒やされる思いがした。しかも博物館と美術館が両方あって、その贅沢(ぜいたく)さに驚いた記憶がある。公園はほかにもあるだろうが、自然が豊かだとは限らないし、中には遊具や生活音に占領されている場合もある。文化施設にしても、催事以外は閑散とするホールではなく、いつも何か見られる博物館と美術館が隣同士というわけだ。おまけに群馬の森そのものが旧東京第二陸軍造兵廠(ぞうへいしょう)岩鼻製造所の跡地という歴史的な意味を持っている。博物館の埴輪(はにわ)コレクションは全国屈指のものだし、美術館は建物だけでも日本建築学会賞を受賞したことのある優れたものだ。客観的に見ても、相当「極上な場所」ということがいえるだろう。

 インターネットでちょっと検索してみても、県外の方が結構訪れ、また関心をもっておられることが個人のブログなどからもわかる。これだけ自然・公園・文化施設・歴史・文化的価値といった五点セットをもっている場所は私自身、乏しいながら全国の博物館や美術館を見てきた記憶をたどっても、そうはないと思う。

 もちろん課題もある。例えば交通アクセスの問題、駐車場の利用方法、博物館・美術館の情報があまり県民に届いていない、などその価値と能力を十分に出し切っていないのではないかという意見が、改善の期待とともに懇談会で指摘された。また、利用者や入館者の減少も深刻な問題として将来に影を落としている。

 そこで森と美術館、博物館の三者がそれぞれの能力をもっと発揮した上で、互いに連携し、「群馬の森」全体を共同体として活性化しようという内容が、座長の桑原高良氏と高崎経済大の友岡邦之准教授とともにまとめさせていただいた提言案に盛り込まれ、懇談会で承認された。

 来月には近代美術館がリニューアルオープンする。以前、この美術館でミュージアムコンサートをさせていただいたことがあったが、休館中も県庁の昭和庁舎で展示を続けるなど、館の企画力と努力はみなさんも認めるところだろう。そこに懇談会の提言を活用いただければ必ず群馬の森は面白くなるはずだ。森に息づいているお宝をこっそり見つけ、自分のお気に入りの組み合わせでぜひ、あなただけの「群馬の森・極上空間プラン」をつくってみてはいかがだろうか。






(上毛新聞 2008年3月21日掲載)