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新田音楽友の会会長 河村 吉太郎(太田市新田木崎町)

【略歴】 東京都生まれ。18歳で陸軍少年飛行兵に。終戦後、旧綿打村職員となり、合併により旧新田町職員に。社会教育、文化関係、公民館に勤務。元旧新田町立図書館長。

図書館

◎町村に造り育てよう

 私が「たんぼの中の図書館」(旧新田町立図書館、現太田市新田図書館の愛称)の建設・運営に携わってからもう三十年になる。最近の図書館関係資料によると、本県の図書館界にも随分と変化が出てきている。

 うれしいのは、まず第一に新設の公共図書館が十五館誕生したことである。別に、全面的に改築した既設図書館が三館、県立から市立に移管された図書館が一館ある。

 第二には、新設された図書館のサービスが、そのすべてとは言い得ないまでも、市民の要求に応じつつあることだ。中には、全国上位にランクされるほどの“個人貸し出し”と、魅力ある文化的な集会事業を活発に進めている図書館もある。今後、県図書館界の索引(けんいん)役として大いに期待したい。

 図書館の活用が高まるかどうかは、図書館資料の質・量と新鮮さにかかっている。館長(司書)をはじめ高い専門性を持って市民の目線で対応する、必要な数の職員がいることも欠かせない。そして入りやすい図書館であることは言うまでもない。

 一九八七(昭和六十二)年の県図書館協会報に、「二十一世紀は図書館の時代」というタイトルで、「一九九X年には、群馬の公共図書館設置率は百パーセントに」と、初夢に託して協会の将来像を描いたが、夢の実現は、いまだ道遠しといったところであろう。

 この協会報は、図書館未設置町村の解消に向けて書いたものだ。栃木県の図書館政策や、埼玉県民の図書館振興策への熱意、北海道の活発な図書館サービスにふれて、本県の知事・教育委員会、市町村長を意識しながら、市民の自発的な「図書館がほしい」運動へ刺激を与えたかったからにほかならない。招かれて新設図書館の計画に参加、開館にこぎつけたこともある。協会報による訴えが、陰の支えになっていたとすれば、こんなうれしいことはない。

 本県の図書館未設置町村は十五町村に上ると思われる。平成の大合併にのみ込まれた町や村を入れればもっと増えるだろう。のみ込んだ市は、図書館を造り育てる政策を忘れないでほしいものだ。

 「図書館は必要だ」と誰しも言う。しかし、「学校、道路の方が先だ」という声に押し潰(つぶ)される。「たんぼの中の図書館」のときも、町議会議員から「道路が先だ」と強い反対意見が出たが、町長の「図書館は造る」との強い決意と、議長の町議会リードによって、“車の両輪”が生き生きと回りだし、各種団体等のバックアップで、総合計画よりもはるかに大きい図書館が出来上がった。隣の町の町長さんが「図書館を造って人が来てくれるだろうか」と心配顔をした時には、「大丈夫ですよ。たんぼの中の図書館だって繁盛していますよ」と励ました。しばらくたってできたその町の図書館は、オープン以来すばらしい実績を挙げている。

 県も市町村も、情報、文化の発信基地である図書館を“いつまでにどう育てるか”、積極的な論議を尽くして理念を共有し、みんなの図書館政策を打ち立ててほしいと願っている。






(上毛新聞 2008年3月11日掲載)