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◎「食」で地域の教育力発揮 JA甘楽富岡には、新鮮野菜を毎日直送で出荷するシステムがあります。東京周辺の西友や生協などに直送し、またインショップ(量販店内の直売所)を設け、都会の消費者に新鮮な野菜を提供しています。この取り組みのおかげで、私も二つの点においてお世話になっています。 まず、明治大の学生たちに新鮮な野菜を食べさせてあげられている点です。現在、私は明治大インキュベーションセンター内に株式会社アイ・フォスターというベンチャー企業を起こしています。前富岡市長でもある今井清二郎明治大商学部特別招聘(しょうへい)教授の協力を得て、私の会社が仲介となり、明治大駿河台校舎十七階にある学生食堂に、JA甘楽富岡から毎日新鮮野菜が届けられる仕組みを作りました。食の安全が問われる中、生産者の顔がはっきり見える新鮮野菜を口にできる明治大生は幸せでしょう。 また、新鮮野菜を納入し始めてから、学生食堂の味がおいしくなったと評判になりました。野菜だけなのになぜだろう、と不思議に思っていたのですが、学生食堂の責任者の方に話を聞いて分かりました。新鮮な野菜を使い始めて、コックさんたちがはりきりだしたのだそうです。質のよい材料がプロの気持ちまで改革しました。やりがいが出て、おいしいものを作ろうとがんばっているそうです。 もうひとつは、明治大生が地域活性化の勉強で、イベントでの販売のために農産物を仕入れるルートを持った点です。その勉強のひとつが、千葉県習志野市にある実籾コミュニティロード商店街の活性化です。 周辺住民の高齢化が進んだことで、商店街は衰退してきていました。私の研究室は、習志野市商店街活性化パートナーシップ事業に応募し、採択され、活性化事業としてイベントに何回か参加しました。イベントをリードして開催したこともあります。そのときは、JA甘楽富岡より新鮮野菜をトラックで直送してもらい、販売しました。住民の関心は高く、二、三時間で売り切れました。同時に仕入れた富岡武井農園の生みたて卵も人気があり、都会の消費者がどれだけ新鮮さを求めているかが分かりました。 また、こんにゃくの製造販売も行いました。こんにゃくの材料を富岡市から購入し、学生三、四人でイベントの前日に仕込み、翌日全員で販売しました。驚いたのは、研究室の中のひとりの学生が作るとおいしくてよく売れるのですが、他の学生が作るとうまくできず、あまり売れなかったことです。こんにゃく作りにはコツがあって、製造過程で熱いこんにゃくを触ることができなければおいしいものができなかったようです。その学生の根性と特性の賜物(たまもの)だったのです。 こんにゃくを販売しないイベントでは「こんにゃくはないのか」と多くの消費者が残念がっています。 このように、富岡市の農産物は、都会の人たちのニーズにこたえ、「食」に幸甚をもたらしています。そして、JA甘楽富岡と大学の連携は、「食」を通じて学生の勉強となり、それは地域がもつ「教育力」でもあるのです。 (上毛新聞 2008年3月10日掲載) |