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◎「心にゆとりを」に共感 今回は、中学校での俳句授業について述べることにする。 これまでの例で言うと、中学校では三年生を対象に授業を行うケースが最も多い。これは現行の学習指導要領に基づいた教科内容で、三年生が俳句の学習(短歌は二年時)をしていることによる。同様に、小学校では六年生が俳句・短歌の学習をすることになっており、前二回(二〇〇七年十一月九日付、二〇〇八年一月九日付)で紹介した事例が六年生を対象としたものであったのも、そうした事情からとお察しいただけるだろう。もちろん、小規模校では全学年合同で授業を行う場合もあるし、小学校では高学年が合同でといった例もある。どのようなケースであっても、授業を受ける児童・生徒に合わせて話の中身をアレンジし、教材やプリントに工夫を加えて活用するなど、やりようはいくらでもある。 さて、いま「授業を受ける児童・生徒に合わせて」と申し上げた。これは、あらためて言い立てるのも恥ずかしいくらい当たり前のことである半面、例えば、ほとんどの場合はじめての経験であろう受験という大きな関門に直面し、不安や焦りといった感情で心の落ち着かない日々を送っている中学三年生などには、俳句を介しつつ、その内面にできる限り寄り添って話をするよう心がけることも大切なのではないかと考えるのである。 「自分の気持ちをどんな言葉で表現するか、ちょっと見方を変えて心に余裕を持つことの重要さを学んだ。これは、これから生きていく上で、とても大切なことだと感じる」 「色々な角度から物を見てみること、発想の転換、お互いを認め合うこと。俳句だけではなく生き方にも通じることだ。そういうことに気がつけば俳句の幅も広がっていくと分かった。まず自分の考え方を少し変えてみる、そんなことが大事なのだ、とは僕は思っていなかったのだ。確かに今、忙しさにそんな考えは埋もれてしまっていた気がする」 どちらも授業を受けた中三男子生徒の感想。この授業では、「心にゆとりを持ち、ものの見方を少し変えてみること」や、「ものの見方や感じ方は人それぞれで違っているのが当然であり、その違いを互いに認め合うこと」などを特に大切な点として話したが、それを生徒たちがしっかりと受け止めてくれているのは、何よりうれしいことだ。さらに、こうした点を今後の人生においても実践してゆきたいと考えてくれた生徒もいて、俳句授業における私なりの意図も、ある程度は伝え得たようにも思われる。 なお、「心にゆとりを持つ」ということに共感を示した生徒が予想以上に多いが、これは現代の中学生はそれだけ心にゆとりがない、あるいはゆとりを持ちたくても持てない生活を強いられているということの証しかもしれず、かえって気がかりなところである。 ともあれ、次回もこれらの点を踏まえ、彼らの胸の内をもう少し探ってみたい。 (上毛新聞 2008年3月5日掲載) |