視点 オピニオン21
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雑誌編集者 吉田 泰章(東京都大田区)

【略歴】 伊勢崎市生まれ。明治大卒。エコ&ナチュラルな情報を企画編集するアクアパパ代表、ライフスタイル雑誌「ナチュラルスタイル」(不定期刊)編集長を務める。

食と温暖化の問題

◎台所が地球の中心かも

 食の安全の問題が、最近、とっても叫ばれていますよね。そして、今年に入ってから地球温暖化対策の話題も毎日ニュースに上らない日はありません。じつは、食の安全も地球の環境問題も、その多くは家庭の台所がカギを握っているのだと思います。

 何を選んで、何を買って、何を食べて、何を捨てるのか。

 台所を中心とした家庭で、どのようなライフスタイルを実践するのかで、自分や家族の安全はもちろん、地球温暖化だって防げるのではないかと私は考えています。

 もし、輸入食材中心の食事から国産のオーガニック(有機栽培の)食材に変えれば、二酸化炭素(CO2)の大きな削減になります。なぜなら、たとえばアスパラガスを海外から空輸すると、国産品に比べて輸送に使われるエネルギーの量が圧倒的に多くなるため、それだけCO2の排出量も多くなってしまうからです。このように、食品の原産地から食卓までの輸送によって排出されるCO2が多い場合を、フードマイレージ(輸入食料の総重量×輸送距離)が高い、といいます。逆に少なければ、低いというわけです。

 実は、フードマイレージを意識して食材を国産にシフトすると、そのCO2の削減効果はエアコンや冷蔵庫などの買い替えによる省エネ効果よりずっと大きくなるのです。そう、誰でも今すぐに始められる、もっとも手軽な地球温暖化対策のひとつなのです。

 今度、買い物に行ったときにスーパーで食材の原産国を調べてみてください。今私たちが食べているものの多くが、輸入品だったのが分かると思います。つまり、カロリーベースで食料の六割以上を海外からの輸入に頼っている日本は、フードマイレージの数値が世界で最も高い国で、世界でダントツに地球温暖化に貢献していたのです。

 しかも、国産のオーガニック食材を選んで、家族で一緒に料理を作って食べれば、海外からの目に見えない危険な食品を買うより、安全で安心なのは一目瞭然です。そして、現在、四割弱しかない国内の食料自給率を上げ、食料危機に備えることにもつながるのです。もう本当にいいことずくめです。強いて弱点を挙げれば、少し値段が高いことくらいですが、安全と環境を考えればまったく問題にならないレベルだと思います。

 また現在、わが国では「食育」の大切さが叫ばれていますが、食育で一番大切なのは「家族で一緒にごはんを作って食べる」ことなのではないでしょうか。家族がひとつのテーブルを囲んで、愛情いっぱいのごはんを一緒に食べて、その日の出来事などを語り合う団欒(だんらん)によって、親子のコミュニケーションや愛情が「食」とともに「育(はぐく)まれる」と思うのです。

 あらゆる物の安さと効率を追求し続けた結果、生命を支える「食品」がどのような経緯で生産されているかも分からない工業製品となってしまい、今の「食の安全問題」と「地球温暖化の危機」に結びついたわけですから、家庭の台所からライフスタイルを見直してみませんか。もしかしたら、台所が地球の中心かもしれませんよ。






(上毛新聞 2008年3月3日掲載)