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管理栄養士 松尾  綾(前橋市石関町)

【略歴】 共立女子大家政学部食物栄養学科卒。2004年、草津温泉フットボールクラブに入社。管理栄養士として、ザスパ草津選手の栄養管理を担当している。

バランス良い食事

◎成長期の体をつくる

 スポーツをする子供にとって食事は大変重要です。健康のため、スポーツをするためにはもちろん重要ですが、体をこれからつくっていくという面でとても重要なのです。体をつくっている段階で良い食生活を送ることは、体ができてしまってから良い食生活を送るよりも、比べ物にならないくらい効果的です。

 まず、スポーツ選手にとって体を大きくできるかどうかは大変重要です。身長の伸びは遺伝子によって決まる部分も多いのですが、素質を十分に発揮できるか否かは食生活と睡眠にかかっているのです。

 バランスの悪い食事ばかりとっていると「体の材料」が不足してしまい、そのために身長を伸ばす可能性を低くしてしまいます。「体の材料」となる主な栄養素はタンパク質(皮膚、骨、筋肉、毛髪、血液などを構成)、カルシウム(骨を構成)、鉄分(血液中で酸素運搬機能を持つヘモグロビンのもと)です。これらの栄養素は成長期の子供にとって重要であるにもかかわらず不足しやすく、不足した場合にケガをしやすくなったりします。

 摂取するための注意点ですが、タンパク質は肉、魚、卵、牛乳などに含まれる動物性タンパク質と穀類、豆類に含まれる植物性タンパク質を組み合わせて摂取することです。こうすることによりタンパク質を構成するアミノ酸のバランスが良くなり、脂肪の取りすぎも防げます。

 カルシウムは、ビタミンDと一緒に摂取することが大切です。ビタミンDはカルシウムの吸収に必要であり、骨の代謝にも必要な栄養素です。ビタミンDは、日光にあたると皮膚で合成されますが、シイタケやサケ、サンマ、ウナギなどに多く含まれます。

 鉄分はホウレンソウ、ヒジキなどに含まれる植物性のものよりも、レバーや赤身の肉に含まれる動物性の方が吸収されやすく、効率的に摂取できます。植物性もビタミンCと一緒に摂取することで吸収効率が上がります。

 成長期の体にとってカルシウムが大切な理由はもうひとつあります。それは骨の強さのバロメーターである「骨密度」に関係します。骨密度は二十歳くらいまで上昇しますが、それ以降は下降する一方です。そのため下降に入るまでにどれだけ上げられるかが一生の骨の強さに影響します。二十歳過ぎてから骨を強くしたいと思ってカルシウムをがんばって摂取しても、下降していくスピードを遅くするしかできません。

 睡眠も体を大きくするために重要です。「寝る子は育つ」といいますが、それは本当です。体をつくる働きを高める成長ホルモンは夜寝ている間に最も多く分泌されるので、睡眠時間が短かったり、途中で妨げられたりすると、それだけで体を大きくする可能性を減らしてしまうのです。

 食習慣については、子供の時に身についたものが大人になっても持続し、改善するのは容易ではありません。大人になってからの体のことを考えて、後悔しないような食生活を子供に送らせられるように、本人の意識改革はもちろん、周囲の大人も気をつけましょう。






(上毛新聞 2008年2月23日掲載)