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◎道のり困難なほど感動 今年の箱根駅伝は、順天堂大、大東文化大、東海大の三校が体調不良による脱水症状やレース中のケガで途中棄権となる波乱の大会となった。総合優勝を果たしたのは、大方の予想通り駒沢大。区間賞は、本県・農大二高出身の深津卓也選手が8区で獲得した一つだけだが、十区間中八区間が区間五位以内という安定した走りで選手層の厚さを示した。 私の母校早稲田大も、エース・竹沢健介選手の故障という不安要素をチームの団結力で乗り越え、往路優勝・総合二位と善戦した。早稲田大には今春、日本人高校生ランナーのトップスリーが入学するようなので、来年は駒沢大と激しい優勝争いを繰り広げるに違いない。 駅伝評論家のような内容となってしまったが、私にとって今大会で一番の出来事は、学連選抜チームで福山真魚(まお)が上武大生として初めて箱根駅伝に出場したことだ。当初は復路の8区で出場予定だったが、故障者が出たことで昨年十二月中旬に急きょ5区を走ることになった。5区は箱根の山を登っていく特殊区間。本来なら十分な準備期間がほしいところだが、わずか二週間で本番を迎えることになってしまった。 そして今月二日のレース本番―。私やコーチの不安をよそに、終わってみれば五人抜き、区間三位という素晴らしい走りを見せてくれた。他の選手がゴール後、苦しそうに倒れる中、福山だけは満面の笑顔でチームメートと抱擁。見ている人までうれしくなってしまうような、そんな素敵(すてき)な笑顔だった。福山はレース後、「走っていてこんなに楽しかったのは初めて。こんな思いがまたできるなら、どんな苦しいことでも我慢できます」と話していたが、私自身も現役時代にそんな気持ちに何度となくなったものだ。 長距離選手の一日は朝練習から始まる。この時期なら日の出前から走り始めるが、寒いし眠いしで決して楽なことではない。私がマラソン出場を目指して練習していたころには、本練習で五十キロ走や六十キロ走などもやったりしていた。時には疲れてしまって「もう走りたくない」と思うこともあったが、また翌朝になると走りにいってしまう…。その理由は、目標に向かって努力し、やり遂げた時の充実感や感動がどんなに素晴らしいものかを知っていたからだ。 こうしたことは競技スポーツに限ったことではない。勉強でも仕事でも、何かを達成した時の喜びは心地いいもので、その道のりが困難であればあるほど感動も大きい。箱根駅伝を見た方々から「感動しました」とのメールをたくさんいただいた。何かをやり遂げた人の笑顔は輝いていて、見ている人にも感動を与える力を持っている。私も福山の笑顔から力をもらった一人だ。 景気悪化や情勢不安で先の見えない世の中だが、自分自身の夢や目標はしっかりと持って生きていきたい。そして、目標を達成した時には、最高の笑顔で周りの人たちとも感動を分かち合えればと思う。 (上毛新聞 2008年1月31日掲載) |