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◎相続人の紛争避ける 被相続人の死亡により相続が開始される。遺言があれば遺言どおりに遺産が承継される。遺言がないと相続人全員の協議により遺産分割しなければならないので、相続人はどう分割したらよいか頭を痛める。そこで、今回は遺言がない場合の遺産分割手続きについて書く。 遺産分割の目的は、親の面倒を見たり、お墓を守る相続人が遺産を多く取得した方がよいと考えられる場合や、生前贈与を受けている相続人には相続相当分が存在しないかもしれないなど一切の事情を考慮の上、協議し、実質的公平を図ることにある。しかし、この実質的公平を図るのが難しい。 配偶者以外の相続人の法定相続分は原則的には平等であるとの決まりがあるにもかかわらず、それぞれの家庭事情や欲が絡んで少しでも多く分け前にあずかろうとする者は後を絶たない。そうした相続人間の利害対立を調整する手だてや話し合いは難しいので、協議中に全面的対立に陥りやすい。相続人間の実質的平等を調整できる者が存在すればよいのだが、探すことは容易ではない。遺産分割には期限がないとはいえ、放置しておくとますます難題が生じ、争いごとが増えるので、早期での解決が望ましい。 相続人のうち一人が死亡すると、その配偶者や子供たちが新しく遺産分割に参加することになるので、当事者の数は増加する。あるいはまた自分の相続分を第三者に譲渡する者も出るかもしれないし、第三者が相続分を差し押さえする場合もあるかもしれない。そうなると第三者との協議なしに遺産分割はできなくなる。 遺産分割を早くする方法としては、法律専門家の助言を仰ぎ、遺産の範囲確定と分割の方針を示して、相続人全員と協議を進める。協議が整わなければ個別に解決していく方法を検討する。合意のできた相続人間で順次、相続分の譲渡や譲り受け、金銭清算などで解決策を進めていく。 相続人の人数が多く、面識のない相続人もいたり、また協議が長引く時などは司法書士に手続き上の仲介の役割をさせることも一考であろう。相続人全員に条件を提案し、賛成の相続人には相続分譲渡証書(印鑑証明書付き)を司法書士に郵送してもらう。司法書士が書類を確認したら、遺産を取得する相続人に提案の代償金などを振り込んでもらう。一度、この書類を入手すると、この場合の印鑑証明書は無期限に効力を有するので、いつまでも利用することができ、協議当事者を絞り込むことに役立つ。 全員からの相続分譲渡証書が入手できず、協議が整わないときは、家庭裁判所に調停の申し立てをする。調停が不調のときは、審判手続きに移行するので、なおも遺産分割の解決の道が開かれている。 このように遺産分割は、さまざまな形で相続人に負担をかけるので、被相続人は、紛争が少なくなるような遺言書を残しておくことも一つの方法であろう。 (上毛新聞 2008年1月17日掲載) |