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◎大学と地域連携の好例 私のゼミナールにはさまざまなグループがありますが、そのなかの展示会研究グループでは、まず地域活性化を研究して、その成果を展示しようということになりました。研究の対象地域は東吾妻町となりました。なぜ東吾妻町かといいますと、グループリーダー・加藤洋一君(商学部三年生)が同町出身だったからです。明治大学に新築された校舎一階のロビーには展示スペースがあり、二〇〇六年六月、研究成果発表の場<東吾妻展>が開催されました。 この展示会の第一の目的は東吾妻町の認知度アップを図ることでした。アンケートによると展示会に来場する前に東吾妻を知っていた人は19%(合計七十八人にアンケート調査)。決して高い数字ではありませんでした。 第二は、東吾妻町の魅力を知ってもらうことでした。自然、産業、文化(遺跡を含む)の素晴しさを東京の人に知ってもらい、実際に訪れてもらうことです。 このような趣旨をお話して、町役場と商工会に協力を求めたところ、ご快諾、ご後援をいただくとともに、展示品、郷土品の貸し出しにもご協力いただきました。民間からもご協力いただき、写真やポスターだけでなく、汪江(ひろえ)こけし、お酒、甘納豆、こんにゃくなどを展示し、来場者はとても興味を持ったようです。 明治大学の総合大学としての強みは、偶然に東吾妻町を取り上げたにもかかわらず、明治大学考古学研究室が同町にある岩櫃山(いわびつやま)で弥生時代の遺跡を発掘したという実績を持っていたことです。東吾妻町に関連する貴重な研究成果がありました。そこで明治大学博物館にもご協力いただき、保管されている発掘風景の写真を展示すると同時に、明治大学博物館の正規の展示スペースで岩櫃山から発掘された土器も展示しました。博物館では、岩櫃山遺跡特別展が急きょ開催されました。 アンケートでは、展示会を見た後に「東吾妻町に行きたくなった」が五十五人(71%)、「行きたくならなかった」が十二人(15%)、「わからない」が十一人(14%)となり、この展示会の目的は達成し得たと考えています。 また、今回の展示会では大学として大きな収穫が三つありました。第一は、学生の出身地を大学の研究対象とし得たこと。学生の出身地とは無縁なのが、東京のマンモス大学の通例です。大学の人材という財産が生かされました。第二は、大学の倉庫の奥にしまいこまれていた貴重な土器の重要性を存分にアピールできたことです。研究の財産が生きました。第三は、学生を媒材として東吾妻町と大学が連携し、先に述べた意義を実証したことです。従って、明治大学は約三万人の学生がいますので、延べ三万地域との連携が可能という計算ができます。 今回の<東吾妻展>では、地域の紹介から、複合的な成果をあげることにつながりました。大学と地域の連携で“ウィンウィン(うまくいっている)”の関係を築く好例となったのではないでしょうか。 (上毛新聞 2008年1月14日掲載) |