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◎自然を好きになること 動物写真家としてカナダの流氷でアザラシの赤ちゃんの写真を撮るようになって十八年がたちます。かつては流氷は水平線まで三百六十度続く広大な世界でしたが、地球温暖化で近年はボロボロになってしまっています。 流氷の上で生まれる赤ちゃんたちが、泳ぎを覚える前に流氷が解けてしまうため、今年は十万頭以上の赤ちゃんが溺死(できし)しただろうと考えられています。十八年間の撮影は私を地球温暖化による流氷の異変の目撃者にしてしまいました。 地球温暖化はすでに多くの生きものの命を奪ってしまっています。 そんな中、私たちはどう生きていくべきか、地球温暖化の中で生きていかざるを得ない子どもたちに何を伝えるかを考えます。 「地球温暖化を防ぐのにはどうしたらいいのですか?」と、よく講演先で子どもに質問されます。私は「簡単だよ」と答えます。 アスファルトの道路の上と、公園の土の上、神社の森の隣で温度を測ってみるといい。アスファルトが一番高く、土の上が少し下がり、森の隣ではグッと下がる。これだけで子どもでも答えは導けます。 アスファルトを剥はがして土に戻し、木を植えて森に戻せばいいだけのことなのです。これを先進国の多くがやれば地球温暖化などあっという間に防げます。しかし、それを文明慣れした人間ができないから温暖化が進行しているのです。 これは周囲をよく観察することによって分かります。どんなアスファルトの片隅にも草が生えるように、自然はいつでもそこに草地をつくり、次に木を生やし、森に戻ろうとしているのです。森に戻りたい自然の言い分を少し人間がかなえてあげるのが一番の環境対策なのです。 大人はよく「自然を大切にしなさい」と子どもたちに語ります。しかし、すでに何度も語られたそのような言葉が実際に功を奏しているとは思えません。CO2の濃度は今も上昇しているからです。 「おもちゃを大切にしなさい」と私たちは子どもに何度しかったことでしょう。しかし、それでおもちゃを大切にし続けた子どもなんていません。一時大切にするかもしれませんが、またしかることの繰り返しです。でも、どんな子どもでも一番好きなものは親に言われなくても大切にします。 「自然を大切にしよう」というより「自然を好きになる」ことの方が大事だと私は思います。好きなものは守りたい、大切にしたいと思う。その方が強いと思います。 自然が好きな子どもが、身の回りに緑を増やすことを提言し、大人がそれに応えていく。緑がどんどん増えればエアコンの温度など苦労なく節制できます。順序はそうあるべきです。これが何よりの地球温暖化対策だと思います。 (上毛新聞 2007年12月27日掲載) |