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◎生産者と触れ合って 今年もワイナリーは児童たちでにぎやかでした。昭和村には横浜市の林間学校があり、毎年、各学校の児童たちが昭和村の自然を課外授業として体験しております、村内のウオークラリーやこんにゃく作りが主な行事でした。 グループごとに地図を見ながらの行動に、こんにゃく作りに、何か違和感をもってブドウ畑から眺めていました。担当の先生方は二カ月前から施設やコースを視察してスケジュールを決めているようでした。 「先生、せっかく農村に来てウオークラリーしているのは勿体(もったい)ないじゃない。農家のおやじの話を、リンゴ園やブドウ畑で栽培の話を、児童たちに聞かせてよ。牧場の牛の顔を見させてよ」 道端での会話から、体験学習の教室が畑へ、牧場へと移りました。 最近の小学校は児童に自主性を持たせているんですね。児童は体験したいコースを選び、グループ編成をして訪れます。ワイナリーには前もって児童たちの質問がファクスで送られてきます。 赤ワインと白ワインは色だけでなく、どんな違いがあるのか? ふつうに食べるブドウとワイン用のブドウはどう違うのか? 仕事をしていて、大変なこと、気をつけていること、工夫していることは? 仕事をして、うれしいことや今の願いや思いは? 毎回十数項目の質問が寄せられてきます。 ワイナリー内で質問はさらにふくらみます。乳牛は毎日何リットルミルクを出すのか。どうして牧場には子牛がいっぱいいるのか。ハワイにリンゴの木はあるのか…。今ではワイナリーが、考えることのたくさんあるホームルームに変身したようです。 横浜市の小学校の受け入れは今年で三年目。ほかに練馬区のボーイスカウト、さいたま市早期起業家たちなど、今、ワイン工場は賑(にぎ)わいを増しています。 私は前橋に生まれ育って、農業経験はまったくない状態でしたが、二○○一年に昭和村にブドウ畑四ヘクタールを開園。収穫の喜びの伴う畑作業は今でも、新鮮で楽しいものと感じています。群馬県の技術選定、一社一技術に「ブドウ栽培からワイン製造までの一貫化」で認定されてのワイナリー事業ですが、昭和村内の野菜、酪農、コンニャクなど先輩農業者の助言百パーセントでなんとか一年一年乗り切っている状態です。 ワイナリー内では、村内で収穫の野菜を取り入れた農家レストランを開業しています。農家が生産した旬の野菜などの食材が、都会の主婦たちに正しく調理されていないのを見かねた農家のおばあちゃんが「俺(おれ)んちさ来い。食べさせてあげっから」と言ったのが農家レストランの始まりとか…。 子どもたちにワインのお話、土と野菜のお話、乳牛と子牛のお話を、黒く日焼けした“おっさん”が大きい声で話しています。でも、実は一番私たちが聞いてほしいのは、聞かせたいのは、お母さんたちなのです。今、ブドウ畑から見えたこと、それは「生産者と消費者の距離が離れすぎている」ということです。 (上毛新聞 2007年12月21日掲載) |