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◎きめ細かさが難しさに 「いらっしゃいませ。こちらは日本年金会館でございます。私はこの会館の案内係、ガイドでございます。何しろこの広い建物をひとりでご案内しますので、不行き届きもございましょう。その折は何とぞこの場に免じ、ご容赦願います。 それでは当会館の生い立ちからまいりましょう。厚生年金会館は一九四二(昭和十七)年に産声をあげ、戦争を経て五四(同二十九)年に再建。国民年金会館は六一(同三十六)年に新築。そうして運命の年、八六(同六十一)年。今から二十一年前、共済年金会館、厚生年金会館、そして国民年金会館の三つを合体し、この立派な日本年金会館が完成しました。そこの土台のところを基礎年金と申します」 筆者は日々、年金の最前線でガイドをしています。ガイドですから笑顔でお客さまと接し、耳をすませて質問を伺い、お客さまが分かるように、安心されるよう手短かに語らねばなりません。 そのつもりで、この欄でも一生懸命につとめてまいります。 さて、初回は「お客さまの行く道」です。六十歳を迎えてからの、お客さまの行く道は数知れません。さまざまあり得ます。 まず「仕事のコース」では、仕事を(1)やめる(2)続ける、続けるとして(3)フル勤務(4)パート(5)再就職。 「年金コース」では(1)くり上げしない(2)全部くり上げする(3)一部くり上げする(4)四十四年で退職する(5)障害で退職する。 「年齢コース」では(1)五十九歳でやめる(2)六十歳でやめる(3)六十五歳前後でやめる(4)六十五歳以降も勤める。 「雇用保険コース」では(1)活用しない(2)五十九歳で活用(3)六十歳で活用(4)六十四歳で活用(5)六十五歳すぎで活用。 「在職年金コース」では(1)年金コースのどれを選ぶか(2)給料は下がるか(3)変わらないか―などなど。 はたまた「男と女のコース」「社会保険ありなしコース」と合わせて七コース。七色の虹のごとく、お客さまの人生のように、色とりどりのパターンがあります。さらに加えれば、経済コースにはとらわれない、わが道を行く、悠々自適の道もあるでしょう。 この七つのコースを組み合わせると何通りになるか。細かいバリエーションを加えますと、数え切れません。選択に迷い、頭を痛めるお客さまがいますが、私の方が実はずっと頭が痛いのです。厚生年金会館は築後六十五年を迎え、その間、たび重なる増改築。この年金会館はご案内したくも、入ったら出られぬペンション(英語で「年金」のことをペンションというそうです)のようです。ガイドの最大の頭痛のタネは、年金図面が読み切れぬところ…。 課題があるから改正する、不公平だから公平にする。「改正」「改築」を重ね、今の会館が完成しましたが、きめ細かさは難しさと表裏一体でもあります。年金現場では今日も相談員が額に汗し、対応の毎日です。二○○七(平成十九)年は奇(く)しくも年金年となりました。雨降って地固まる、禍を転じ福と致しましょう。 (上毛新聞 2007年12月20日掲載) |