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◎揺るぎない気概持って 今年の三月末をもって、教職を定年退職し、早くも半年以上が経過した。 自らの教職人生を振り返る時、大きな満足感を覚える。最後の最後まで意欲的に突っ走り続けたことは自分としては誇りである。教職人生が長かったという感慨は決してない。むしろ、昔の六十歳と今の六十歳は違うし、まだ、余力は十分にあるという気持ちですらある。一市民となった今でも、教育に対する思いは強いものがある。 それにしても、教育の変化が激し過ぎる。待ったなしの大きな変革のうねりの中で、教育界は喘(あえ)いでいる。十年一昔という言葉は過去のものになりつつある。 現在は教育の最大の危機でもある。世の中が変わり、子どもも保護者も変わってきた。学校・教師はゆとり教育の中でゆとりがなく、その忙しさは「市街地の交差点に立つような慌ただしさ」でもある。津波の如(ごと)く、課題も次々と押し寄せてくる。そして、先行き不透明で、教育不信ともいえる現代の風潮の中で、学校・教師は本当に懸命に頑張っているのである。 子どもは日々成長している。だから、教育の停滞は許されるはずはない。どんな逆境であろうとも学校・教師は積極的に責任ある教育を展開しなければならない。むしろ、逆境だからこそ、学校・教師の真価も問われることになる。学校・教師が自信を失っていて、よい教育ができるはずはない。そして、自信は努力の過程から生まれるものであり、この教育改革に対して果敢に挑戦をし続ける中で、社会や保護者からの信頼は得られるものである。「朝の来ない夜はない」のである。 また、時代の移行期とは、時代と時代の間であり、そこには飛躍や可能性も秘められている。そう考えれば、自己変革を図ろうとする者にはこれは恵みの嵐ともなる。「天は自ら助くる者を助く」ものである。企業も同様であり、企業を取り巻く環境も常に変化している。そして、企業経営は変化への挑戦であり、リスクを恐れたらチャンスは逃げるのである。異質の質を生み出せるか否かが勝負である。 さらに、教育は人なりであり、人は心なりである。心でしか相手の心は動かないものであり、心で心を伝える営みが教育であると考える。換言すれば、「以心伝心」である。そして、教師は教育のシンボルであり、最大の教育的環境である。そのことをしっかりと自覚し、この難局を乗り切ってほしい。苦しい時が勝負時であり、これは「産みの苦しみ」だと考えればよい。 今後の教育の推進については、後輩諸氏に託すしか術すべはないが、より一層の揺るぎない気概を持って、果てしない教育道を力強く邁進(まいしん)してほしい。そのことを、心から期待するとともに、大いなるエールをおくりたい。 (上毛新聞 2007年11月20日掲載) |