視点 オピニオン21
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地球屋統括マネジャー 小林 靄(高崎市東町)

【略歴】 前橋市生まれ。ちょっと変な布紙木土「地球屋」のデザイナー兼統括マネジャー。本名洋子。古布服作家、歌人としても活躍。著書に「花の闇」など。

貴重な資源

◎今あるもの生かしたい

 昨夜の雨に打たれしままに動かざる青き落葉にまた朝の雨

 身の回りに痛ましい事件や事故が多発していて、居ても立ってもいられない感じであったが、最近はあまり大々的には報じられていないようだ。が、なくなったわけではなく、それらに麻痺(まひ)してしまっているのではないかとさえ思われる。

 私自身も、だんだん感受性が乏しくなってきているような気がする。特にライフワークとしている短歌を作る時などは、神経を研ぎ澄ましておかなければ詩が掬すくい取れなくなってきているのだが、神経を研ぎ澄ましておかなければと意識すること自体、年齢を否応(いやおう)なく意識させられる。以前は歌を作るときに「神経を研ぎ澄ます」必要などなかったと思う。「窓揺らす風を見るためふと立ちて その高さに水仙の香り…」のように、普通に話すような感じで短歌ができた。

 冒頭の短歌は、普段の生活では見過ごしてしまうような事象である。少し時間の余裕があった朝のこと、足元のまだ色づかない青い落ち葉が昨夜の雨に濡(ぬ)れたまま踏まれていて、その上にまた朝の雨が降っていたのを見た時にふっと浮かんだ短歌である。忙しい毎日に追われて立ち止まることが少ない。しかし忙しいからこそ、私などには立ち止まって考える時間が必要なのだろう。この、時々のオピニオンの原稿の締め切りや短歌の同人誌の締め切りが否応なしに私を立ち止まらせてくれる。たぶん、自分自身を省みる時間を提供してくれているのであろう。

 そういえば、先日、この群馬出身の首相が誕生した。官房長官をいきなり辞任してから、話題に上ることが少なくなっていたが、福田康夫首相として再登場してからの所信表明演説に深い感銘を受けた。「従来の、大量生産、大量消費を良しとする社会から決別し、つくったものを世代を超えて長持ちさせて大事に使う『持続可能社会』へと舵かじを切り替えていかなければなりません」と言われている。

 私の勤務先である地球屋のコンセプトはその名の通り、「地球に優しい・エコライフ・リサイクル・人に優しい」などである。今、われわれがやっていることは、まさに首相の言われたこのことである。大きなプロジェクトではないが、先人が残してくれた衣食住の根本の部分を生かそうとしている。プラスチックなどに取って代わられてしまった木製品、ポリエステル製品に押されている天然素材などを見直して、現在の生活に取り入れようと工夫している。古い道具などの別の用い方を提案したり、捨てたり燃やしたりしてしまっている着物も、今着られるような服に直したり、服にならない布は裂いて織り直したりしている。そして、これらの運動をもっとPRするために、このような服を全国から募集してコンテストを開催したり、また一般にも浸透するようにファッションショーを開催したりしている。

 資源が底をつく日を少しでも遅らせることができるように、今あるものを生かし、大事に使っていく提案をこれからも続けていきたいと思っている。






(上毛新聞 2007年10月28日掲載)