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◎居住実態踏まえ改善を 日本の外国人登録者数は年々増加し、約二百八万人となっている(二○○六年十二月末現在)。群馬県の全人口と同程度の外国籍の人が日本全国で暮らしていることになる。また、その滞在は長期化し、定住化の傾向にある。筆者のかかわる外国人の子どもの教育分野においても、日本生まれや幼少期から日本で育った外国籍の子どもが増えている。以前から暮らしている在日の韓国・北朝鮮の方々だけでなく、いわゆるニューカマーといわれる南米や東南アジア出身の多くの外国人が一時滞在ではなく、生活者として日本で暮らしている。 住民、生活者としてこれほど多くの、さまざまな国籍の人たちが日本に暮らす状況はこれまでになかったものである。ゆえに、彼らの生活実態と制度の齟齬(そご)が生まれている状況が所々に見られる。例えば、外国人登録の登録住所と実際の居住地との不一致が多数あることが挙げられる。 日本国籍者を対象とする住民基本台帳制度では、市外に転出する際にはまず転出届を行い、その後、引っ越した先の自治体での転入手続きにおいて、転出届の際に得た書類の提出が必須になる。だが、外国人登録制度では転出の際に転出届を行う必要がない。転入した自治体での手続きにおいて外国人登録の居住地変更の手続きを行うのみである。日本人の場合には転出届の時点で異動が記録されるが、外国人登録制度では転出届がないことにより、実際の異動と記録の間に時間差が生まれる余地が大きい。もし、引っ越した先で手続きを行わなければ、いつまでたっても以前の住所での登録が残ったままとなる。 また、母国に一時帰国のつもりで帰ったが、そのまま何かの事情で再来日しなかった場合にも、日本での外国人登録の住所は残ったままとなる。加えて、外国人は雇用の状況が不安定なこともあり、日本人と比較して異動の頻度が高い。このようなことから、多数の登録上の住所と実際の居住実態との乖離(かいり)が生じているのである。 文部科学省の委嘱により、太田市で行った七歳から十五歳の外国人の子どもを対象にした実態調査においても、対象者約八百人のうち23%の子どもが既に転居、帰国していたりで実際には登録の住所に住んでおらず、居所不明となっていた。登録と居住実態との乖離が全体の四分の一を占めていた。 自分がどこに住んでいるかは、各種行政サービスを受けたり、納税などの義務の履行において最も基本となる情報であろう。住民としての基本となる情報である。多数の外国人が住民、生活者として暮らしている実態を踏まえ、齟齬が生まれにくい制度の改善が必要であると感じる。これは太田市、大泉町など外国人が集住する二十三市町で構成する外国人集住都市会議でも度々訴えられている事柄である。現状を踏まえ、居住実態と登録の住所との乖離が生じにくい、住民としての自立が確立される制度への早急な改善を期待したい。 (上毛新聞 2007年10月12日掲載) |