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◎健全育成に欠かせない 近年、小・中学校で不登校児童・生徒が増えている。昨年度の全国の不登校児童・生徒は十二万六千人に上り、中学生では三十五人に一人の割合だという。 不登校児童・生徒は、学校へ行けない理由を、友達関係とか先生の対応とかに求めがちだが、真の理由は別にあり、本人もその理由に気付いていない場合が多い。 不登校は、適応障害であるといわれている。学校という集団の中での生活にうまく適応する能力が未発達なのである。集団の中で活躍している自分の姿を思い描いていたが、現実は活躍できないという状況に直面した場合、その状況の打開に向けて努力しようと考えたり、別の活躍場面をさがしたりして、集団の中での自分の居場所を見つけられれば不登校とはならない。ところが、自分は力がないし、みんなからも認められないと思って、この居心地の悪い状況を乗りこえられないと不登校に陥ってしまう。真面目(まじめ)で潔癖な子ほど現実を受け入れられず不登校になりがちである。 すこやか子どもクリニック(神奈川県葉山町)の三好邦雄院長が、ある雑誌に「子どもが健全に育つための七つの宝物」と題し、次の七つの能力をあげておられた。(1)精神が安定している(2)好奇心が旺盛である(3)エネルギーに溢(あふ)れている(4)柔軟で広い価値観を持っている(5)自分に満足することからくる良いプライドを持っている(6)社会性が育っている(7)感性が豊かである。 時代が移り、子どもが変わっても、ベースにこの七つがあれば子どもは健全に育つ。このうち一つが欠けると、子どもは挫折したり、ゆがんだりしてしまう、と述べておられる。不登校にならないためには、この七つの能力をバランス良く育成する必要がある。これらの能力は、学校、家庭、地域社会の教育を通して総合的に培われるものであるが、スポーツ活動によっても養うことができる。 たとえば、厳しい練習に耐え、試合で勝利を目指して全力で活動することから(3)のエネルギー溢れる状態を、試合における集中力や葛藤(かっとう)、あるいは平常心から(1)の精神的安定を、試合で勝つこと、自己の技術の高まりの自覚から(5)の良いプライドを、仲間との協力、切磋琢磨(せっさたくま)、友情、ライバル等の関係から(6)の社会性を培うというように考えられる。 私は、フェンシング指導において強い選手の育成を目指しているが、スポーツ指導も究極は人間づくりだと思っている。競技力の優れている選手に対しては、鍛える過程を通してそれにふさわしい人間性を求めるし、技術の劣る選手にも、フェンシングを学ぶことを通して自分の生き方にプラスとして働くことを学び取ってほしいと思っている。三好院長の七つの宝物の育成を念頭に置き、フェンシング選手の社会適応能力の向上を図りたい。そして、フェンシングを除いたときでも良い人間であるよう育成したいと思っている。 (上毛新聞 2007年10月5日掲載) |