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板倉町文化協会長 小林 新内(板倉町大高嶋)

【略歴】 館林高卒。県社教連合会理事、県防犯協会理事、県少年補導会理事、町区長会長など歴任。現在、県文化協会監事、町社会福祉協議会長も務める。

敬老活動

◎「ありがとう」の思いで

 今年の敬老の日は九月十七日だった。敬老の日というと九月十五日に決まっていたが、このごろでは毎年期日が変わる。これは休日を有効に活用するためらしいが…。

 敬老の日の行事は各地でいろいろな形で開催されたようだが、私の地域でも九月一日に地区の公民館で開かれた。七十歳以上の九十人ほどが対象になった。この地域の敬老行事には長い歴史がある。明確ではないが、太平洋戦争も終わり世の中が落ち着きを取り戻しつつあった一九五四年ごろから、地域の氏神様の社務所にある広間を会場に始められたようだ。当時は集会所や公民館もなく、また、それらしい組織もない中で何人かの有志の女性が自主的に集い、地域の仲間に声をかけ合って始められたとのことだ。ご馳走(ちそう)は自分たちで食材を持ち寄り、手作りの料理で高齢者をもてなした。

 国民の祝日「敬老の日」が制定されたのが六六年だから、それより十年以上も前になる。以来、休むことなく毎年引き継がれ、当時主催した人たちの多くは亡くなり、現在は孫たちが中心になって開催している。形も少しずつ変わり、途中で行政区が肩代わりをしたが、それまでの伝統を守り続けている。

 今年の行事のキャッチフレーズは「ありがとう」だった。参加された六十人あまりの高齢者からも主催者に対して「本当にありがとう」と感謝の言葉が会場にあふれた。その中に元気で参加された満九十九歳のおばあさんがいて、ご馳走をほお張りながら、特別に用意された花束に笑顔を埋めていた姿が特に印象的だった。

 高度経済成長を経てバブルがはじけ、そのあと不況の時代も長かったが、漸(ようや)く明るい兆しが見え始めたようだ。この間、着実に時代は変化した。少子高齢化も急速に進み、日本の高齢化率は20%を超えた。平均寿命も女性八五・八歳で世界一、男性七九・○歳で世界二位と長寿国家になった。人間誰でも長生きしたいと願っていることで大変めでたいことであるが、このめでたさの陰にいろいろな問題があることも事実だ。

 一人暮らしの高齢者も増加、健康保険制度の見直しにより高齢者の負担が増えた。介護保険の財源にもかげりがあり、高齢者の頼みの綱の年金にも不安がある。やり切れなさを痛感している人も多いことだろう。社会的弱者といわれる高齢者がその地域で安心して暮らせる環境を整えることが地域福祉の原点であり、関係機関でも真剣に取り組んでいるが十分とはいえないのではないか。

 それらのことを思うと、自主的に自分たちの地域のお年寄りに感謝の気持ちを表わし、ややもすると寂しくなりがちな老後をみんなで支え、元気づけようと半世紀にもわたる間、引き継がれている敬老の活動には頭の下がる思いがする。

 国民の祝日の「敬老の日」が今後も形だけの休日とならないように、また高齢者にとって自分たちが生きてきたことへの意義が感じられる一日になるようにと願っている。






(上毛新聞 2007年9月21日掲載)