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浅間山ミュージアム代表 飯田 宏朗(嬬恋村大笹)

【略歴】 玉川大文学部卒。1987年に東京都町田市から嬬恋村に移住、建築業と宿泊業を営む。2005年9月から浅間山ミュージアム代表。ぐんまグリーンツーリズムサポーター。

グリーンツーリズム

◎古民家活用の長期型で

 今、現存する江戸時代の農家や商家を古民家と呼んで、修復や移築をして再利用するのがブームとなっています。嬬恋村でも、村役場の政策推進課を中心にグリーンツーリズムの一環として、浅間山が噴火した一七八三(天明三)年以降に建てられた築二百年ほどの、当時の農家としては一般的な形式の建物の修復・再生を明治大学商学部の学生による農村体験と、明治大学内企業の¬アイ・フォスター」によるイベント集客、そして建築の専門学校である中央工学校の学生の実習カリキュラムを兼ねたボランティアという形で行っており、五年計画の二年目となっています。私もグリーンツーリズムのサポーターとして参加しています。

 本来のグリーンツーリズムの目的は、都市部の人たちに農村部での体験をしてもらうことで地域の活性化を図ることですが、イベント型の一回単発のグリーンツーリズムは、初めてそれを行う地域では入門型としては適していると思いますが、長期的なグリーンツーリズムを行おうとする場合は、果たして地域の活性化にどれだけ貢献できるか、私個人の意見としては疑問に思っています。

 しかし、この嬬恋村の試みは他の地域で今まで行ってきたグリーンツーリズムとは一味違った試みとなっています。それはまず単発的な一回完結のイべント型のグリーンツーリズムではなく、長期的なスケジュールを組んで行えることにより、途中経過の中で自由なイベントやワークショップを組み込むことが可能となることです。そして結果として完成した建物が地域の中で利用され、その建物を利用した次のステップでのグリーンツーリズムの計画が立てられることです。

 また、前述したワークショップの開催などは、今までの行政主導型では難しかった営利目的の集客型プランが、行政と教育機関と企業、民間の観光業者や個人によるジョイントベンチャー型のグリーンツーリズムを行うことで可能となります。このワークショップのメリットは、都市部で古民家の再生に興味を持つ人たちを集め、再生工事の手伝いをお願いでき、その効果として参加者自身が手伝った建物が残ることにより、イベント参加型とは違った達成感を味わってもらえることです。もちろん、ワークショップの開催中はイベントを組み込むことも可能であり、参加者の連泊を可能にもできますし、長期的な開催の中でのリピートも期待できます。

 日本のグリーンツーリズムの歴史は一九九四年に略称「農山漁村余暇法」が制定されて以降に本格的な活動が全国で広がっていきましたが、十四年目に入り、都市部の人たちはより質の高い、目先の変わったグリーンツーリズムを希望するようになってきています。その要望に応えるためには、今後計画する自治体にとって、ほかと違い継続性のある、質の高い魅力的なグリーンツーリズムのソフトとハードのプランを開発できるかどうかが成功の鍵となるでしょう。






(上毛新聞 2007年9月20日掲載)