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大鯉(おおごい)野武士軍団総帥(そうすい) 小林 孝次郎(桐生市境野町)

【略歴】 群馬デザインアカデミー(現群馬芸術学園)卒。昨年9月まで、桐生市内で「アイアド企画」を経営。鯉釣り愛好グループの総帥として鯉釣りの普及に努める。

特定外来生物

◎日本固有の魚に影響

 「シーン」とやけに静かだ。辺りには誰も来ていない様子、上流を見ても下流に目をやっても人の気配がない。こんな日もある釣行日、コイ竿をセットして川岸に腰をおろしてじっと当たりを待つ。

 下流から川面を滑り来るわずかな風に涼を感じながら、ふと目の前の水面に目をやると、カメが顔を出しながら川下へと緩やかな流れの中を移動していった。ミドリガメだった。水中に見えた大きさは二七センチぐらいだったろうか。

 ミドリガメは一九五○年ごろ、米国から輸入されたもので少々強暴な一面がある上、確かサルモネラ菌が見つかり、捨てられた経緯がある。また察するに最近では子ガメで飼われた物が大きくなって捨てられ、沼や湖でもしばしば目にする。日本固有種のクサガメ(人に慣れる)やイシガメとは性格が合わないと聞いている。少なからず生態系への影響は免れない。

 この「生態系がこわれる」という話は以前からよく耳にはしているが、もとをたどると人の手による場合が多い。

 身近な話題でも、何年か前に東北地方で異常繁殖したジャンボザリガニ(アメリカ産)、今では工夫されて食用として缶詰で販売されている。また北海道ではさらに大きな九○センチ以上にもなるというザリガニ(ウチダザリガニ)が生息している。また、やはり数年前、茨城県の霞ケ浦ではオオタナゴ(中国産)が異常繁殖したことも報道された。

 特定外来生物や淡水生物でも決して人ごとではないのだ。霞ケ浦で異常繁殖し続けているアメリカナマズは先日、移動禁止令が出た。小魚を大量に食べてしまうので漁業に多大な影響を与えるとか。霞ケ浦では釣り人にも協力を得たいと、釣ったアメリカナマズを桜川漁業協同組合(茨城県つくば市)でキロ単位で買い取っている。利根川水系に生息していて、渡良瀬川や足利区域で私も確認している。霞ケ浦で捕獲されたアメリカナマズは三十五年前に食用として輸入され、現在では肥料として利用されている。

 また、釣りファンも多いブラックバスは、小池百合子環境大臣当時、全国一斉に移動放流禁止令が出されている。

 以前に近所の小川でよく見られたメダカは最近、なかなか自然の中では見ることができない。東京都をはじめ絶滅危惧(きぐ)種に指定されているが、最近は愛好家の間で飼育されたり、地域によっては保護運動を展開している所もある。つい先日、琵琶湖固有のニゴロブナが絶滅危惧種に指定されたばかりだ。ブラックバスによって大量に食べられてしまうので、かなり減少しているらしい。

 このような例を目にし、また耳にすると、昔から日本に生息していた固有の魚の生態系が特定外来生物によってこわされている。黙って見逃すわけにはいかない。






(上毛新聞 2007年9月4日掲載)