視点 オピニオン21 |
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◎何事も挑戦の気持ちを 「視点」の執筆を始めて、かれこれ一年がたとうとしている。紙面に出るたび、多くの知り合いから「新聞に載ってたね」という報告をいただく。まあ、それはそれで本当にありがたいことなのだが、書いた内容について触れると、たいていの場合は「インターネットのことは難しくてね」とはぐらかされてしまう。 私としては、できるだけ専門用語を使わずに、分かりやすい表現を心掛けているつもりなのだが、知人にいわせると「普通の人は文章中に『インターネット』や『ホームページ』の言葉が出てきただけで“拒絶反応”を起こすもの」なのだとか。まあ、それは極端過ぎる例えにしても、「インターネット=難しい」という先入観を持っている方が多いのは事実だろう。 先日、ある会社を訪ねた。同社のオリジナル商品をインターネットで売るにあたり、今後の展開やホームページの改善を一緒に考えてほしい、という相談を受けてのこと。そこで、業者に作ってもらったというページをさっそく拝見したが、とたんに言葉を失った。「買い物かご」と呼ばれるショッピング機能があるから、一応は店舗としての体裁は保っている。だが、稚拙なデザインに加え、まるで何屋だか分からないトップページ、商品の魅力を半分も伝えていない販売ページ。どれ一つとして、プロの仕事といえる部分が見受けられない。これでは、今後の展開も改善もあったもんじゃない。 さらにそんなホームページであるにもかかわらず、最初に制作代だけで何十万円も支払い、毎月の運営費として数万円もかかっているという。「インターネットで商品を売りたいが、難しそうなので、ページの制作や運営は専門家に全部やってもらおう」ということだろうが、これこそが「インターネット=難しい」という思い込みから生じた悲劇である。 七年前の起業当時、私もインターネット初心者の一人だった。もちろん、ホームページなんて作ったことはない。むしろ「自分にとっては不可侵な聖域である」と決めつけていた節もある。だから、ページ作成は業者に外注していた。だが、どうもイメージ通りのページができてこない。このままでは時間ばかりが過ぎて、開業資金も底をついてしまう。そこで一大決心して、マニュアル本を片手に勉強を始めてみた。勉強にしろ、仕事にしろ、趣味にしろ、一つ分かると二つ、三つと加速度的に理解が進んで面白みを増す、という経験をされた方は多いはずだ。私にとってホームページ作りが、まさにそれだった。かくして一年後には、上毛新聞社主催ホームページコンテストでグランプリを頂戴(ちょうだい)することになるわけだが。 知らず知らず自分の中に“壁”をつくって「私の限界はここまで」と決めつけてしまっていることは多い。外の敵に挑み負けるならまだしも、内なる敵に戦う前に負けてしまっていては、これほどもったいないこともない。自身への戒めも込めて。 (上毛新聞 2007年9月3日掲載) |