視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎計画的に予防保全を 今年八月一日、米国ミネアポリスのミシシッピ川に架かる橋が突然落橋し、走っていた五十台以上の車が川に転落するという痛ましい事故が発生したことはご承知かと思います。この橋は架設後四十年を経過し、老朽化が原因ではないかと報道されています。 一九八○年以前、米国では道路投資がピーク時に比べ四割減少し、道路の維持管理に十分な予算が投入されず、八○年代初頭には米国の道路施設の多くが老朽化し、「荒廃するアメリカ」と呼ばれるほど、劣悪な状態に陥っていました。八○年代になって、財源を増強し、維持修繕に力を入れたことにより、欠陥橋梁(りょう)の数は減少してきましたが、二○○四年の時点でも全体の30%弱に当たる約十七万の欠陥橋梁が全米に存在し、いまだに「荒廃するアメリカ」から抜け出せないでいると聞いています。 わが国もこの事故を対岸の火事として見過ごすことはできません。日本では六○年代の高度経済成長期に道路整備が急ピッチに進められました。ニューディール政策の時代から整備が本格化した米国と比較すると、日本は米国に三十年程度遅れています。全国の国道や県道などには約十四万の橋梁があり、そのうち建設五十年以上の橋梁は二○○六年時点で約6%を占めています。それが十年後には約二割、二十年後には約五割に達します。直轄国道では、毎日のパトロールとともに、五年に一度定期点検を行い、劣化や腐食などの状況を把握し、必要に応じて補修など対策を講じてきています。しかしながら、今後、橋梁の補修や架け替えなどにかかる負担増が懸念されます。 また、わが国は世界の約10%の地震エネルギーが発生する地震列島です。群馬県は近年大きな地震などに見舞われていませんが、能登半島地震や新潟中越沖地震など、大規模地震発生の切迫性が指摘されている想定震源域以外の各地で地震による被害が発生しており、地震は全国どこでも起こりうる可能性があります。地震が発生しても甚大な被害が生じないように、橋梁の耐震補強にも取り組んでいかなければなりません。 わが国でも、適切な管理を怠ると、十年、二十年後には「荒廃するアメリカ」と同じ状態になることが懸念されます。道路施設は、損傷を放置すると後年に大規模な修繕工事など大きな負担が生じることがあります。このような教訓を生かしつつ、安全・安心を確保するため、計画的に予防保全を実施していくことが重要と考えています。一方で、県内では渋滞解消などを目的に上武道路など新設の道路整備が進められています。公共事業費は六年連続減少しており、限られた予算の中、より効果的・効率的な執行が求められています。 (上毛新聞 2007年8月31日掲載) |