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◎基本知識をしっかり 「中学生にとって大切な存在は誰だろう。悩みを相談できるのは、彼らにとって家族や先生のような年上の存在よりも、年が近い友達ではないかと思う」「私たちは彼らに『あなた』と『私』の考え・思いは違うけれど、みんな違っていいことを伝えたい。そして自分の人生に向き合ってほしい。そのために切っても切り離せない性についての正しい知識を持ってもらい、自分も相手も大切にしてもらいたい」 学生ピアカウンセラーは中学校のピアエデュケーションの目標をこう書いた。「ピア」とは仲間のこと。学生たちにとって高校生は「ちょっと前の自分」であり、何を必要としているのか分かっていた。しかし、中学生は別だ。「何を求めているのだろう」「何を伝えてゆけばいいのだろう」。見えない中から模索が始まった。ヒントをくれたのは養護教諭だった。出した結論は「基本の知識をしっかり伝えよう」ということだった。 群馬県教育委員会が行った二○○五年の「性及び性教育に関する意識調査」の中で、「性教育は重要だと思うか」という問いに対して、教師全体の98・4%、保護者全体の94・2%が重要だと考え、特に中学校など「早期の段階」で性交についての知識や避妊具の使い方などを具体的に教える必要性を両者とも答えている。しかし、実際指導できるかどうかになると、「性交の行為」について子供に話したことがある教職員は4・3%、保護者は2・5%にとどまっている。性の問題を取り上げることは勇気がいることだ。その一歩を踏みだす決断を藤岡市内の中学校校長がしてくれた。「難しいが、とにかくやってみよう」と。 学生ピアカウンセラーは、いくつかのエクササイズの中で一人ひとりの個性を大切にしようと伝え、中学生に自分の人生設計を書いてもらった。そして「14歳の母」というオリジナルの劇の中で、二人の中学生の出会いと妊娠を取り上げた。模造紙に図を描いて妊娠のメカニズムを丁寧にしっかりと伝えた。 中学生が大きく反応したのは射精の場面、たった一つの精子が卵子と結びついて受精が成立する場面。「私たちは、何億個の中から選ばれて生まれてきたんだね」と、学生たちは生まれてきたことのすばらしさを分かってもらいたいと一生懸命伝えた。中学生たちの反応をみると「14歳の母」の劇を93%の生徒が「面白い」「やや面白い」と感じ、「劇だと普通に説明されるより分かりやすかった」「楽しかった」と感想を書いてくれた。授業前と比較して「性のイメージ」は「大切なもの」「すばらしいもの」「なくてはならないもの」へと大きく変化した。 性教育といっても得意分野はある。教員は教員の、親は親の、ピアにはピアの。どれが勝っているということはないし、それぞれの役割がある。少なくともピアの持つ「身近さ」と「一生懸命さ」は、中学生の心に訴える有効な武器となるだろう。 (上毛新聞 2007年8月28日掲載) |