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◎伝統音楽で盛り上がる 前回(六月三日付)に続き、中国湖南省での桜三万本植樹計画について書く。 ◇◇ 昼食後、専用車で蒋家村に向かう。チェン州市内から車で約二時間。当たり前だが、市内を外れるほど道は悪くなる一方。舗装はされているが穴も多く揺れが激しい。流れる景色は総じて丘陵が多く土は赤い。 蒋家村に着いたようだ。村の入り口で車を降りる。「熱烈歓迎」の意の旗が掲げられ、百五十人ぐらいであろうか、子供からお年寄りまで、村総出の歓迎を受ける。村を開いて六百年、外国人が来るのは初めてだそうだ。けたたましく鳴り響く爆竹、伝統音楽とともに、皆一緒にぞろぞろと沿道を進む。子供たちは、カメラを向けると満面の無む垢くな笑顔で応えてくれる。朽ち始め、決して荘厳とはいえないが、とても古く風格ある門をくぐったとき、歴史に刻む大きな第一歩を踏み出したような、非常に身の引き締まる思いがした。 集会所に案内される。村長が歓迎のあいさつ、われわれの代表である大宮登先生(現高崎経済大学学生部長)がお礼と今回の植樹計画の趣旨説明をする。通訳を通してのやりとり。われわれはとても緊張しながらあいさつした。村人は初めて見る日本人、初めて聞く日本語に興味津々のようだ。しかしそこは同じ顔のつくりのアジア人同士、すぐに距離は縮まった。集会所でも、村総出の「熱烈歓迎」が続く。子供たちは初めて見るデジタルカメラに興味があるようで、数え切れないほど記念撮影をした。その後、蒋家村の見学に出るが、私は昨夜首を痛め、激痛のため休憩をとる。 村の建物はほとんどがれんが造りで、比較的新しい家屋はコンクリート造り。特に瓦屋根の傷みが目立つ。三百年もたつ歴史的家屋もあったが、廃屋となり、保存も考えていないそうだ。 集会所で、皆で夕食をとる。村の伝統音楽を聴きながら、非常に盛り上がる。料理はやはりおいしい。すべて手料理。ピーマンの肉詰めや豚足、タケノコと卵炒(いた)めなど。初めて味わう本場の湖南料理である。舌がしびれるほど辛い。何度も繰り返される乾杯は、文字通り必ず杯をあけなければならない。 夕食後も交流は続く。演奏団は、二胡と太鼓で「三国志」をうたってくれた。中国農村での、大切な客のもてなし方なのだそうだ。しかし、日本のお囃子(はやし)や神楽、獅子舞もそうであるように、中国でも伝統音楽は消えつつある。出稼ぎで村を離れる若者が多く、継承できないのだ。家の中心にある日本製のテレビが、それに拍車をかけている。複雑な気持ちだ。村人も、伝統音楽を囲んでのこれほどの宴(うたげ)は、本当に久しぶりなのだそうだ。 私は、いよいよ首の痛みがピークに達する。近くに病院がないため、捻挫(ねんざ)やむち打ち損傷を一発で治せるという村の長老に治療をお願いする。案の定、痛みで動かせない頭を無理やり動かすという荒療治に、一瞬本来の痛みを忘れる。備えあれば憂いなし。中国農村部に行かれる際は、あらゆる薬、湿布も持っていったほうがよい。 (上毛新聞 2007年8月26日掲載) |