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新島学園短大兼任講師 関野 康治(高崎市貝沢町)

【略歴】 高崎高、早稲田大政経学部卒。銀行勤務を経て同大学院を修了。建設会社法務部門で不良債権処理、企業再生に取り組む傍ら、新島学園短大で講師を務める。行政書士。

憲法と参議院

◎民主大勝の衝撃と期待

 今回の参院選で最大の衝撃は、なんといっても、野党の民主党が大勝して「第一党」になったことだ(一九八九年の参院選で旧社会党が躍進、自民党の議席を上回ったが、非改選を合わせると第二党のままだった)。しかも、二年前、衆議院では与党に三分の二以上の多数を与えた国民世論が、二年で逆転した。

 このことは三つのことを示唆する。まず、今がまさに「時代の変革期」にあり、進むべき方向が定まらないという事実。だからこそ、世論がこうも変わる。次に、民主党が依然「頼りない左翼と保守の寄り合い所帯」のイメージを抱かれつつも、国民のまとまった支持を集め「国民政党」へと脱皮する可能性があること。最後に、自民党の参議院議長独占を破り、議院運営の主導権を握ったことで、単なる「反対政党」「無責任野党」ではいられなくなる大きな政治的責任を背負ったことだ(ここが、八九年当時の旧社会党と質的にちがう)。

 そこで、民主党の意欲と工夫次第では自らの政権担当能力をアピールできるし、またGHQ(連合国軍総司令部)に取引材料とされて、憲法にあいまいな存在として位置づけられた参議院の存在意義を戦後初めて問う試みも、その意欲が民主党にあれば可能にできる立場を手に入れた。今後、民主党が野党にありがちな「反対政党」から脱皮して、国民政党になるならば、国民にとっても幸せだ。交代可能な二つの主軸となる政党があるなら、国は安泰である。

 最後に、今回の参議院選挙の結果の「衝撃と期待」をまとめると、次のようになろうか。

 一つは、小泉郵政選挙のときと同様、勝ちすぎた衝撃(一人区で自民党は壊滅したが、自民党の得票は野党全体の八割強と、大きな減退はなかった。ただ、離反した自民支持層と社共の支持層と、投票率の上昇分の多くが民主党に流れたと分析されている)。その結果、自民党が参議院第二党に転落し、戦後初の議長明け渡し。そこで、「なれ合い」を排して、責任政党になれるかが、民主党が次の衆議院選挙で勝利して政権政党に「脱皮」できるかの鍵となる(期待)。

 二つ目は、野党が主導権を握る参議院は、もはや衆議院の「カーボンコピー」ではない、という事実(衝撃)。参議院改革の意欲をもち、従来の「なれ合い」を排し、責任ある改新の立場を示せれば、国民の喝采(かっさい)を招くだろう(期待)。その意味で民主党が日本憲政に果たすべき責任は彼らが想像する以上に重いといえる。

 三つ目は、旧経世会(昔の竹下派)の崩壊という衝撃。思い起こせば、YKK(山崎拓・小泉純一郎・加藤紘一)は経世会支配を終わらせることを目的に発足した。「自民党をぶっ壊す」という小泉政権の公約は安倍政権の下で実現しつつあるといえる。万年与党たる自民党の崩壊は、二大政党制へ移行する「本当の過渡期」の現出となるか(期待)。






(上毛新聞 2007年8月23日掲載)