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太田市教委学校指導課主事 根岸  親(埼玉県深谷市上柴町)

【略歴】 福島市生まれ。大阪大大学院人間科学研究科修了。太田市教委の外国人児童生徒教育コーディネーター。ボランティア研修でブラジルに1年間留学した。

外国人の子ども教育

◎家庭では母語を大切に

 日本の学校に入った外国人の子どもが最初にぶつかるのが、日本語が分からないという言葉の壁だ。自分の思うところが伝えられない、相手の言っていること、周りで話していることが分からない。これは子どもにとって大きなストレスであろう。加えて、日本の学校という未知の文化にも慣れる必要がある。個人差はあり、編入した学年が上であるほど、その困難は大きくなるが、最初の壁を子どもたちは苦労しながら、だが、おそらく大人のそれよりずっと早く、柔軟に克服していく。

 また、最近では外国人住民の定住化に伴い、幼いころから日本で育った、あるいは日本生まれの外国人の子どもたちが年々増えている。幼少のころから日本の保育園や幼稚園に通っている外国人の子どもたちは、小学校に入学するころには滑らかに日本語の日常会話をこなす子がほとんどである。

 しかし、日本語を母語としない外国人の子どもたちにとって、日常会話の日本語が理解できるようになることが、すなわちクラスの授業が分かるということにつながらない現状がある。特に学習内容に抽象的な内容が多くなってくる小学校高学年以降になると、日本語で日常会話はできるのに、授業となると内容が理解できない、という外国人の子どもがでてくる。これは必ずしもその子の能力が低いというわけではない。学年が上がるにつれ、日常生活の友達との会話で使われる日本語(生活言語としての日本語)と授業で使われる日本語(学習言語としての日本語)との差が大きくなってくるからである。

 子どもたちの将来を見通せば、「生活言語としての日本語」にとどまらず、「学習言語としての日本語」を身に付ける必要がある。言語は思考するときの軸となる。日本語もしくは母語、いずれの言語でも思考の軸となる言語を身に付けないまま大人になることは、その子にとって大きな損失である。学校現場では外国人の子どもたちに日常会話の日本語や学校適応にとどまらず、学力保障、つまり学習言語としての日本語習得を目指して指導にあたっている。子どもたちの実態は多様である。全国的にもまだ取り組みの歴史が浅く、試行錯誤しながら取り組みを進めているところである。

 また、学校と家庭と異なる言語環境で育つ子どもにとって保護者の理解、協力は非常に重要である。私は、家庭ではぜひ自分たちの母語を大切にしてほしいと思う。母語を大切にすることは、親の持っている文化や価値観を子どもに伝える手段を確保することであり、良好な親子関係につながる。親子で意思疎通のできる言語がなければ、家庭教育は成り立たない。基盤となる親子のつながり、家庭の支えは、子どもの成長を力強く後押しする。母語で培った言葉の力は第二言語習得にもプラスの影響があるといわれている。

 子どもたちの将来と社会生活における言葉の重要性を踏まえ、支援、働きかけを行っていきたい。






(上毛新聞 2007年8月14日掲載)