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ふれあい・いきいきサロン池田代表 宮田 秀穂(安中市大竹)

【略歴】 安中市職員(在職中、農業実習生としてブラジルへ派遣される)を経て県職員。退職後、県立特別養護老人ホーム高風園長などを歴任。長く日伯親善交流に努めている。

友好交流の輪

◎輝ける老後を過ごそう

 戦後の混乱が収まらない一九五一年、「弱者救済」を目指して社会福祉事業法は制定された。当時は人生六十年といわれ、定年も五十五歳だったから、老後は五年と短いものであった。

 それから五十六年が過ぎた今年七月二十六日、厚生労働省から公表された簡易生命表によると、平均寿命は男性が七十九歳で世界二位、女性は二十二年連続一位で、八五・八一歳と過去最高を更新している。六十歳定年を考えると、それからの二十年前後をいかに生きるかが大きな課題である。

 年齢とともに失うものがある。まずは健康である。世界保健機構では「健康とは、病気でないだけでなく、やる気ある心と肉体を持つことだ」と定義している。

 確かに、年なりに丈夫で、痛いところがあっても寝込まないで体力や能力に見合った仕事ができる。ましてや、それが誰かから「ありがとう」と感謝されるものだったら最高だ。

 二○○二年の総務省の就業構造基本調査によると、六十五歳以上の就業者は全就業者の7・8%となっている。定年退職後を考えれば当然の結果である。

 社会的なつながりや家族のきずなが希薄になりがちだ。いわゆる一人ぼっちにならないようにすべきである。仲間づくりこそ大切である。

 例えば、夫が死んだ後、同居している皆が働いている。また夫婦健在だが難聴で会話ができない。これでは寂しい、やりきれなさ、不安がいっぱいで認知症がどんどん進行しないとも限らない。これだけはどうしても避けたいことなのだが…。

 生きる目的というか、生きがいも失いがちだ。趣味でもなんでもよいから、一生続け、没頭できる「なにか」を持つべきである。入所施設で教えられたことだが、趣味などを持った人ほど交流、行動の輪は広く大きい。脳は刺激され、その顔はいつも明るく輝いていた。

 人は生まれ、やがて老いて死んでいくという事実を素直に認め、誰もが生きざまの中に老いがあるという現実を受け入れ、老後をいかに心豊かに生きるかを考えるべきである。

 年老いて失うもので、健康の衰えと経済力の低下は防げない一面もあるが、社会的な連携や生きがいづくりは、その気になり、やる気さえあれば年齢に関係なく可能なことである。

 退屈は非常につらい。趣味などを通して公民館活動や老人クラブ、ボランティア・サークルなどに積極的に参加し、生涯学習に励むことが大切である。

 米国の宇宙飛行士ジョン・グレンさんは一九九八年、当時七十七歳で九日間の宇宙飛行を終えて帰還した。「年老いた人たちも、もっと若い人たちと同じように大志と夢を抱いている。それを実現するために行動を起こそうじゃないか。長いすに座っていてはだめだ。それが私のやり方です」と記者会見で述べている。

 お互いに友好交流の輪を広げ、輝ける人生を全うしたいと努めている。






(上毛新聞 2007年8月11日掲載)