視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎事前準備と休憩が大事 登山を楽しむには、必ずしも体力が必要というわけではない。体力のある人、ない人それなりに自分に見合った山、コ−スを選び、マイぺースで行動すればどんな人でも楽しめることが、他のスポーツと異なる大きな特長だ。 しかし、この魅力的な部分が場合によっては重大な事故を招くのも確か。近年の登山事故は一般コース、バリエーションルートを問わず、危険個所以外での疲労や不注意による転倒などが原因との報告も出ている。冒頭述べたように「体力がなくても登れる」が「体力がいらない」わけではない。目的の山行には事前準備の段階でそれに見合った体力や技術を身に付けたい。 山歩きをスポーツ的にとらえるなら、これほど長い時間を費やすスポーツはない。開始から短くて三、四時間、ときには十時間を超える行動もあり、当然そこには「疲労」の二字が付きまとう。疲労は肉体的と精神的に分類されるが、肉体疲労は通常いわれている通り、ゆっくり歩く、休む、適度に水や食べ物を取ることなどで回復を図れる。精神的な疲労を軽減するには、目標や達成感を持つことが必要である。 登山中、中高年が頑張り過ぎ、そこで急に体力をなくすことも多い。そんな時は適度の時間、休憩を取り、精神的疲労を軽くし、新たな緊張感を持って登山を継続することが重要である。 統計資料によると、過去十年間で山の事故は増加しており、「自分自身や仲間が…」と考えると、けして他人ごとではない。危険は常に付きまとい、山岳レスキューに携わってみて意外に多いのが心臓発作や睡眠不足など体調管理をうまくできない人の事故や適性でない用具の使い方による事故、登る山の認識、知識不足などの無謀登山である。 国内における山岳レスキューは、原則的に県警本部や地元警察署が指揮をとる形で行われ、長野、富山、岐阜、群馬のように入山者の多い山域を抱える県警には山岳救助隊が整備されている。民間人による救助隊や各都道府県には行政のヘリコプターがあり、これらが山岳レスキューに回される機会も多い。季節や天候、場所、時間、遭難者の人数、けがの状況などさまざまな条件を検討したうえで最適の方法で現場へ急行する。 今日の山岳レスキューのほとんどはヘリで行われる。救助要請時点で検討するのだが、最大のメリットはその迅速さである。弱点もあり、日の出から日没までに限定され、有視界飛行なので、基本的には悪天候では飛べない。 ヘリを要請した場合の費用というと、まず民間航空のチャーター料が時間当たり約五十一万円。空輸料(待機場所から遭難現場近くのヘリポートまでのフライト料)は時間当たり約四十二万円、そのほかパイロットらの手配など十五万円ぐらい。さらに救助隊は県警だけで組織するとは限らず、民間救助隊を要請する場合もある。ちなみに民間だと一人に付き三、四万円の計算で、ケースバイケースだが、高ければ総額百万円以上かかってしまう。 とにかく、楽しい思い出がたくさん残る登山を心がけたいものである。 (上毛新聞 2007年8月2日掲載) |