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共愛学園前橋国際大国際社会学部長 大森 昭生(前橋市駒形町)

【略歴】 宮城県出身。東北学院大大学院博士課程在籍中の1996年に共愛学園入職。2003年から現職。県男女共同参画推進委員、前橋市社会教育委員などを務める。

男女共同参画社会づくり

◎仕事と生活の調和を

 「いい明日は仕事と暮らしのハーモニー」。これは、国が定める男女共同参画週間の今年の標語です。男女共同参画社会は、性別にかかわりなく、一人一人の考え方や生き方が尊重され、個性や能力を発揮できる社会のことで、二十一世紀の最重要課題とされています。この取り組みで大切なのは、性別によって生き方や役割が固定されるようなことがあれば、それを見直してみる視点だといわれています。このことについて私たちの意識は随分変化しており、例えば、国の調査では「男は仕事、女は家庭」ということに反対の人が賛成の人より多くなっていることが分かります。しかし、実生活では、家事育児のほとんどを女性が分担し、男性は仕事に追われているというのが実態です。そこで、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)がキーワードとなっているのです。

 ワーク・ライフ・バランスとは、仕事、家庭生活、地域生活、個人の学びなど、さまざまな活動について、自らが希望するバランスで展開できる状態のことですが、家庭と仕事を両立したい男性が増えているのに、それがかなわなかったり、働きたいのに家庭責任のために働けない女性が少なくないという現状は、個人にとってだけでなく、多様性が受容され人々がともに生きていくことのできる活力ある社会の形成にとっても課題となっています。

 では、このワーク・ライフ・バランスを整えるのにはどうしたらよいでしょう。データでは、私たち一人一人の希望や意識は高まっていることがうかがえます。そうなると、まずは企業などの事業体に社会的責任を果たす意味からも取り組んでもらわなければなりません。もちろん、企業にとってもさまざまなメリットがあります。優秀な人材が集まると同時に、育成した人材がとどまりやすくなります。さらに、ワーク・ライフ・バランスが整っている社員ほど仕事への意欲が高まることも分かっています。そのほか、業務の見直しや職場における性別役割の見直しによる効果、ダイバーシティー(多様性)・マネジメントの効果、職場全体の能力開発への好機となることなどが期待されます。

 しかし、企業などの取り組みにだけ期待することでよいのでしょうか。日本は、ILO(国際労働機関)一五六号条約<家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約>を批准しており、その中では、職業上の責任と家族的責任との間に抵触が生ずることなく職業に従事することは権利であることがうたわれています。本当の意味で豊かな生活がおくれる社会を築くためには、国にもより積極的な取り組みをしてほしいと願わずにいられません。標語としてうたっている以上、個人や企業などに意識改革を訴えるだけではなく、現行の法律や制度が例外なく順守されることで、実効性が確保されるような取り組みや、企業などをより一層支援する仕組みの整備が望まれます。ワーク・ライフ・バランスをみんなが享受できる環境を創出する責務が国にはあるのではないでしょうか。






(上毛新聞 2007年7月30日掲載)