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地球屋統括マネジャー 小林 靄(高崎市東町)

【略歴】 前橋市生まれ。ちょっと変な布紙木土「地球屋」のデザイナー兼統括マネジャー。本名洋子。古布服作家、歌人としても活躍。著書に「花の闇」など。

リサイクル

◎先人の行い受け継ぐ

 うらおもて色の異なる花びらをもつ薔薇(ばら)のことまた人のこと

 京都議定書・地球温暖化・スモッグ注意報などの言葉が行き交う毎日であるが、薔薇の花などの植物や小さな動物、われわれ人間にいたるまで、すでに温暖化など環境の変化による障害が出始めていることが心配されている。

 これらの言葉とはあまり関係ないような私の仕事は、洋服のデザインで、使われなくなった着物・使えなくなってしまった着物などのリフォームをしている。ところが先日、テレビ東京の「ワールド・ビジネス・サテライト」の取材を受けた。取材の目的は、「使われなくなった日本古来の幟(のぼ)り旗(ばた)などが見直され、利用され始めている」ということで、私が作っているブラウスやスカートが番組のディレクターの目に留まったのだった。インタビューの中でこのリサイクルの部分に触れた。われわれが普段何げなくやっていることは、よくよく考えてみると、先人が行ってきたことをそのまま受け継いで、繰り返していることにすぎない。着られなくなった着物を作り変えたり繕ったり、ただそれだけにすぎないのだが、「リサイクル」などと時流に乗った言葉で言い換えると素晴らしいことのように聞こえる。

 ペットボトルを溶かし、糸にして新しい繊維にするとか、竹から繊維を取り出して商品にするとかなどの、大きなプロジェクトを組んで巨大な予算でやるようなことは行政や大企業に任せておけばよい。われわれができるリサイクルは、たんすに眠っている着物を出してきて着られるものを作る、ごみに出してしまいそうな着物も着られるようなものに工夫することで、すぐにでも実行できることである。だが、その気軽さが、一歩間違えると、ただ「着られるだけ」の実用的なつまらない物になってしまう。そこを工夫し、少しでも古臭くなく、おしゃれに楽しく着られる服をと、いつでもそんなことを考えて過ごしている。

 「デザインに行き詰まることがあるのでは」とか言われるが、実はデザインをしているという感覚は全然ない。もともとが洋服のリフォームから入っているので、着られるように、無駄にしないように変化させているという意識しかない。布が好きで、布を見ると何でも着るものにしたくなる、額に入れたりして飾っておくよりもとにかく着てみたい、と考えている。趣味の一環であるからやっていて楽しいのだが、理由をつけようと思えばいくらでもつけられるだろう。

 地球に優しい・もったいない精神・タイムリー・おしゃれ・環境にやさしい…などだが、そんな肩ひじが張るものではなく、昔から父母がやってきたことを、単純に繰り返しているにすぎない。ロハス(健康と環境を配慮した生活スタイル)、スローフーズなどの言い方はカタカナになってハイカラそうになっているが、日本人の良いところをそのまま残した生活そのものではないかと思っている。






(上毛新聞 2007年7月28日掲載)