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アートプランナー 梅津 宏規(前橋市野中町)

【略歴】 仏エクサンプロバンス芸術大学院研究課程を修了し、DNSEP(仏国家上級表現資格優秀賞)の学位取得。昨年から県美術クラブ(県画商組合)代表幹事。

文化の基準

◎日本人の尺度に自信を

 今年四月、JR東京駅近くにある東京国際フォーラムに世界各国の画廊が約百社集まり、国際美術見本市「アートフェア東京2007」が開催されました。

 世界にはパリのFIAC(国際現代アート見本市)、スイスのバーゼル、アメリカのシカゴでの国際美術見本市が有名です。近年では韓国のKIAF(国際アートフェア)をはじめ北京、上海でも見本市が盛大に行われるようになりました。

 日本でも今から約二十年前のバブル全盛期から国際美術見本市を開催してきました。しかし美術に対する日本人の意識や慣習になじまないのか、なかなか見本市として経済的成果が表れてきませんでした。そして、一昨年からこれまでの現代アートを中心とした国際美術見本市にかわり、日本の古美術、日本画や油絵、版画といった近代美術から現代美術までの作品を扱う画廊が世界中から集まるアートフェアが開催されるようになりました。

 このアートフェアは単に展示即売会という意味合いだけではなく、日本国内や世界の美術動向を表し、今後の国内の美術の方向性を世界に向けて発信する、いわばアート文化の産業見本市です。

 特に今日の世界的な漫画ブームを背景に、日本に対する関心はそれまでの芸者、富士山、車に家電、または歌舞伎や茶道、禅寺の庭といった日本の伝統文化から今日の日本の文化に移り、若い日本人作家が世界市場で活躍しているという事実を皆さんはご存じでしょうか。

 そして今回のアートフェアは、驚くほどたくさんの外国人が海外から訪れました。そのことは日本の美術見本市史上これまでほとんど目にしなかった光景であり、多くの美術関係者が驚きをもって見守る中、大盛況裏に終わったのです。

 いつの時代からか日本人は逆輸入ものに弱いといわれます。実際、さまざまな「もの」や「こと」が日本で評価されないまま海外流出し、そこで一定の評価を受けるといつの間にか凱旋(がいせん)帰国し、一躍高い評価を受けることもあります。

 江戸末期から大正期にかけ、それまで国内では芸術として認識されていなかった浮世絵や工芸品など多くの作品が、当時日本を訪れた他国の美術品収集家によって評価されました。海外に持ち出され、今日、海外の有名美術館の主要コレクションとなっていることは周知のとおりです。

 経済大国日本といわれて久しいですが、私たち日本人は文化やものの価値観までも欧米諸国と良くも悪くも同様になったかのように思い込んでいるような気がします。日本人若手アーティストの作品を多くの外国人が購入する姿を見て驚くように、私たちが勝手に思い込む世界基準は、実は幻想基準であることをもっと認識すべきなのかもしれません。

 いつのころからかいわれる「どこどこの国では…だから」という他国に依存した価値観ではなく、私たちの身近なものの中にある本質を見極めながら、謙虚さを失うことなく、日本人の尺度に自信を持つべき時期に来ている気がします。






(上毛新聞 2007年7月20日掲載)