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◎さっそうと塾に通って よろずや余之助では「何事も楽しく、面白く事を運べば人はついてくる」との信念の下に、喫茶事業を核としてさまざまなユニークな活動を展開しているが、一つだけ真剣に取り組んでいる事業がある。それは知る人ぞ知る「かんがるうクラブ」。知的障害児の学習塾である。 余之助は団塊世代の物好きな異業種専門家によって構成されてはいるが、さすがにこの事業に手を出せるのは、その道の専門教育を受け、実践経験を持つ女性Mさんのみ。他のメンバーには手も足も出せない領域である。 義務教育の下では本来、すべての子供は教育を平等に受ける権利を有するものであるはずだが、知的障害児については、決してそう理想的にはいかないようだ。障害の程度や状態がそれぞれまったく異なるため、健常児並みの教育を求められれば、十分な専門訓練を受けた教師がマンツーマンで指導しなければならないだろう。残念ながら現体制下でそれを求めるのは、ちょっと無理であると想像できる。健常児にはさまざまな塾や稽けい古こごとのチャンスがいくらでもあるが、障害児となると極めて限られてくる。ましてや知的障害児となるとなおさらである。理由は言うまでもなく、『採算ベースに乗らない』の一言に尽きる。 このかんがるうクラブは看板こそ上げてはいるものの、募集活動は一切なし。パンフレットやホームページを見ての問い合わせが時折あるだけだから、生徒数もわずかだ。もっとも専門家とはいえ指導者一人では無理もない。 「知的障害児も健常児も、子供は皆同じ。人として生きてゆく上でなくてはならない学力、つまり読み・書き・計算の力をつけてやりたい。普通の子が喜々として稽古ごとや塾に通うように、知的障害児もさっそうと塾に通ったっていいじゃないか」 そんな気持ちで意気込んで始めたものの、通ってくる子は単に知的発育が遅れているだけではなく、自閉的傾向が強かったり、多動であったりと、非常に個性的で手ごわい。教材も一人一人に合わせて作らねばならず、時には体を張って指導する場面もあり、傍らから見るよりはるかに苦労が大きいようである。 実は開設にあたり、障害児の指導にも熱心だといわれているフランチャイズ大手学習塾に傘下教室の認可を求めたが、あっさり断られたばかりでなく、「陰ながら協力」の約束もどこへやら、後になって運営上思いもよらぬ制約を受け、余之助一同、大変悲しい思いをした経緯がある。 しかし世の中は捨てたものじゃない。かんがるうクラブの新聞記事に目を留めたある財団法人が、寄付を申し出てくれたのである。その温かい支援をお受けしたことは言うまでもない。孤軍奮闘、悪戦苦闘のMさん、どこかで誰かが見ていてくれるということに勇気づけられ、以来、元気に励んでいるようである。 (上毛新聞 2007年7月17日掲載) |