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料理研究家 茂木 多恵子(高崎市)

【略歴】 高崎市生まれ。跡見学園女子大国文科卒。1981年、フランスに留学し、コルドンブルーで学ぶ。82年10月、クッキングハウス茂木を開設。

食材

◎自分の口は自分で守る

 干物、むきエビ、ひき肉、豆腐、厚揚げ、がんもどき、練り物(かまぼこ、さつま揚げ、ちくわ等)、野菜(ホウレンソウ、コマツナ等)、果物(イチゴ、グレープフルーツ等)、そして胡麻(ごま)など―。これらは特に吟味して買いたい品々です。真空パックされた干物には人工的に油をぬっている味がします。最近、養殖の魚は明記して販売することが義務づけられ、外国産も原産地を表示しています。私は養殖魚を否定はしません。天然ものだけになってしまえば、ほとんど口にできないほど高価になってしまいます。

 しかし、消費者は養殖の餌まで知るすべはありません、食べてみて泥臭いとか魚本来の味ではないと感じたら食べないに越したことはありません。自分の舌で確かめるしかないのです。

 むきエビなど火を通しても生のような透明感があるのも、プリプリ感を出すために人工的に手を加えていると思えます。

 豆腐も湯豆腐にしたらすべて溶けてしまうもの、大豆の香りが不自然にあるもの、厚揚げなども粉っぽさが口に残るものが売られています。

 練り物類にしても昔の味とは程遠い感じがします。最近の葉物野菜は傷まない上、味もそれぞれのくせ(風味)が薄くなってしまっています。野菜は毎日口にしているので徐々に慣らされてしまっています。

 果物は、この季節の夏ミカンが姿を消してしまいました。グレープフルーツも酸味が消え、甘味の強いものばかりが増えています。イチゴも水耕栽培が増え、酸味は消えつつあります。果物は酸味が程よくあるから甘味が際立ち、そのバランスのよさがうまさになると思います。

 また、一部のスーパーでは牛豚合いびき肉の割合を表示していますが、すべてのスーパーで表示をしてほしいものです。合びき肉を調理すると、時には半分の量になります。ということは半分が脂身。鶏肉の鮮度を見るのは皮面を見て判断したいのですが、パックで売られているものは身が上になり、判断がしづらくなっています。

 先日、少々高価な胡麻を手に入れ、インゲンの胡麻よごしを作りました。「そう、この味! 胡麻はこんな味だった」。それは風味があり、香りが高くて懐かしい味でした。常に口にしているものはその味に慣れてしまい、変化に気づきません。この先どんな食材を食べさせられるのか想像すると怖くなるときがあります。本来の味を知らない若い世代を不憫(ふびん)に思います。まだ昔ながらの豆腐や野菜もたくさんあります。これをぜひ継続し販売してほしいと思っています。

 この問題を私流に考え解決するには、自分の味覚の記憶に頼ること、疑問符が付く食材は口にしないこと、納得できるものを探すことです。「自分の口は自分で守る」ということでしょうか。






(上毛新聞 2007年7月10日掲載)