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テクイ総研代表 平野 欽一(伊勢崎市今井町)

【略歴】 日本大法学部卒。サンデン知的財産部長を経てテクイ総研を設立。知的財産戦略や産学官連携、人材育成などをテーマに活動、著作もある。元群馬大客員教授。

新時代の企業改革

◎「知財権」を経営の柱に

 二十一世紀は、「知」と「創」と「成」の時代と考える。すなわち、「知」とは、知識、知恵、知的財産を意味し、「創」とは、創造、創業、創出をさし、「成」とは、成果、成功、成長をいうのである。このことからして、知をベースに、モノづくり、ソフトづくり、サービスづくりを成しとげる中小・ベンチャー企業の新時代である。

 試みに、わが国は、創造↓保護↓活用という知的創造サイクルで、国際競争力の強化や企業の生き残りを図る知的財産戦略を推進している。現在、企業では(1)事業戦略(2)研究開発戦略(3)知的財産戦略を関連づける三位一体の経営が重視されている。

 通常、知的財産というと、大企業や中堅企業でのことのように思われているが、二十一世紀は、中小・ベンチャー企業こそ、特許制度を最大限に活用して、企業の存続発展と社会貢献を図らなければならないと考える。なぜなら、小さい企業が、大企業、中堅企業や海外の企業と対抗するには、イノベーション(技術革新)から誕生する発明や、県が推進している一社一技術などを知的財産権として、経営に最大限活用しなければならないからである。

 換言すれば、発明の発掘は自立化へのチャンスである。二十一世紀の企業は、(1)模倣から独創(2)量から質(3)規模から価値へと大転換を図る正念場を迎えているといえるだろう。

 今、強小が弱大に勝るといっても過言ではない。そのため、中小・ベンチャー企業の発展の鍵は、知的財産権の取得と活用にある。経営者は、知的財産権についての一層の認識と、さらなる意識改革、発想の転換、行動革新をもって、大変身することを希望する。

 そこで、知的財産権の定義について述べると、知的財産権とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権、その他、知的財産に関して法令により定められた権利または、法律上保護される利益にかかわる権利(知的財産基本法第二条第2項)をいう。この定義からして、知恵の時代、知的創造の時代といえる。

 経営者の意識強化を考え、中小・ベンチャー企業の知的財産権の役割について概要を述べると、第一に中小・ベンチャー企業の礎をつくる知的財産権の構築は、意識改革、発想の転換が知的源泉である。第二に中小・ベンチャー企業を防衛する知的財産権は、ライバル企業に負けない知的武器である。第三に中小・ベンチャー企業を支える知的財産権の基本は、研究開発の重要な果実である。第四に中小・ベンチャー企業を伸ばすのは知的財産権がもたらす先行者利益、超過利潤である。第五に中小・ベンチャー企業の存続発展を図る知的財産権は、二十一世紀に挑戦する中小・ベンチャーの企業像である。

 以上からして、知的財産権なくして中小・ベンチャー企業の発展はないといえる。






(上毛新聞 2007年7月1日掲載)