視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎正確な知識や情報を 二○○五年十一月、ピアカウンセラー養成講座を受講した大学生たちが、初めて藤岡のK高校でエデュケーションを開始した。学生たちは何度も練習を繰り返し、藤岡保健福祉事務所の保健師さんや、養護教諭の先生たちに見てもらいながら「この中身で、本当に高校生たちに分かってもらえるか、伝わるか」と悩みながら検討を重ねた。 そして当日、緊張の中でエデュケーションは始まった。五十分授業の導入は、「色、いろいろ」というエクササイズ。「あなたの色はどんな色?」「自分の色はこんな色」と色で自己イメージを伝え合いながら、自分では予想もつかない自分を発見することもある。グループになって恥ずかしそうに伝え合う高校生たちに対して、大学生ピアカウンセラーは「一人一人個性が違う。みんな違っていいのだ」というメッセージを伝えた。 次のセッションは「ライフライン」。自分の生きてきた道を振り返り、これからどのような人生を歩んでゆくのかライン(線)を描きながら夢や希望を書いてもらう。「二十五歳で結婚して、子どもが生まれて、一番ハッピー」と書いてくれた高校生。中には、「希望なんてない」と白紙の高校生もいる。学生たちは戸惑いながらも、「今すぐ目標を決められないこともあるよね。それが今の自分でOK」とそのままの高校生を認めようとしていた。 最後は性感染症をテーマにした劇が行われ、おなじみの漫画「タッチ」の南とたつやという主人公が登場した。「好き合った二人がセックスしようとするのも自然なこと」、でも「お互いを大切にするために、自分の気持ちをしっかり伝え合おう」、そして「性感染症から自分たちを守るために、避妊を確実にしよう」と訴えた。高校生たちは「すごく身近でわかりやすかった」「自分もその場の雰囲気に流されないようにしようと思う」と自分ごととして引き寄せて考えてくれていた。 ○四年のぐんま思春期研究会による群馬県内の高校生五千四百九十八人に対する性意識・性行動に関するアンケート調査の結果によると、性交経験率は三年生男子では45%、三年生女子で38%に達している。しかも、ちまたでは性情報がはんらんし、何が正しい情報なのか選択できない環境に若者は置かれている。「いかがわしい本を見ないこと」「関心を勉強に向けなさい」と叫んでも、急激な体の変化の中で性的関心が最も高まる時期がまさに思春期の特徴である。隠すのではなく、むしろその関心に応え、正確な知識や情報をしっかりと届けることが今問われているのだ。 性感染症の劇のシナリオは、大学生ピアカウンセラーたちが自分たちの実体験をヒントに、揺れる気持ちを表現しながら作り上げた。それは大人の感覚では到底書けないものだった。だからこそ、「生きてゆくうえで性は切っても切り離せない」「自分の性、そして生を大切にしよう」ということが高校生たちの心に響くメッセージとして伝わったといえる。 (上毛新聞 2007年6月28日掲載) |