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◎再設計するチャンス 自民党が敗北して衆参逆転(参議院における与野党逆転)が生じれば、首相交代で自民党は下野。さもないと、野党が与党の法案をすべて否決、廃案にし、国政が著しく停滞するという主張がある。 しかし、与党としては憲法の条規にのっとって、参議院で衆議院と「異なった議決」をした法案については堂々と衆議院において再議決をすればいい、と前編(五月十六日付)で述べた。 さて、政治的にそんなことはできないと主張する人々がいる。しかし、かつて与党が衆議院で「三分の二以上の多数」を占めることはなかったのだから状況はまるで違う。この「憲法現実」の意義を過小評価してはならない。一九八九年に衆参逆転が生じたときは、自民党に再議決という「宝刀」はなかった。ところが、小泉郵政解散の結果、与党は「三分の二以上の多数」を衆議院で獲得し、戦後六十年を経て初めて、両院の意思が一致しない場合に憲法が予定した「衆議院における再議決」が現実に機能する場面が出てきた。 この状況を踏まえて後編では、占領下での憲法制定過程で翻弄(ほんろう)された参議院の存在意義を問い直し、再設計(例えば、米国の「上院」のような役割・機能を参議院に与えることの検討)する千載一遇のチャンスではないか、という問題提起をしたい。 国会が参議院のせいで機能不全に陥れば、「なんのための参議院か」という議論が当然起こる。GHQ作成の憲法草案はある意図をもって「一院制」にしていたのは専門家の間ではよく知られている。米国が当初から腹の内では二院制を許容しつつ、日本との「駆け引きの材料」にすべく一院制にしていた事情があり、それを知らない日本の要求で「二院制を復活」させたときから、参議院は「接ぎ木」のごとく憲法に位置づけられた。上院としての意義も役割も憲法に規定されず、政治的現実は、「衆議院のカーボンコピー」といわれ一段下に見られてきた。だから、舛添要一議員が「参院は姥うば捨すて山か」と憤ったぐらいだ。 そこで、逆説的になるが、衆参逆転で国会が機能不全となれば、参議院批判の世論を通じて、曖昧(あいまい)なままの「参議院の存在意義」を問い直すチャンスとなりうると私は考える。八九年に初めて衆参逆転をしたときは、与党は「三分の二以上の多数」を占めてなかった。なお「五五年体制」の延長でなれ合いが続いたから、政治改革も遅れた。九三年の細川護熙内閣誕生に象徴される政界再編劇の幕は実はまだ下りていない。小泉内閣の人気の一つはなれ合いを排した毅然(きぜん)とした態度、潔さだった。それが茶の間に浸透した。今度なれ合いをすれば、政界再々編へと「主権者意思」は動くかもしれない。 ある与党参議院議員は「古い政治文化」の残滓(ざんし)が衆議院よりも参議院に強いという。それを一掃するためにも、衆参逆転の結果が出ることが、この国のためかもしれないという主張には耳を傾けるものがある。 (上毛新聞 2007年6月10日掲載) |