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◎地域の環境を見直そう 「長崎は今日も雨だった…」と人気グループが歌ったヒット曲をはじめ、国際観光都市の長崎と雨を結びつけた歌は多い。そして長崎ほど雨という歌詞が街の情景にマッチしている都市も少ない。そこで、本当に長崎市では雨の降る量が多いのかどうか調べたことがある。その結果、一年間の雨量からみると長崎が特に多い訳ではないが、雨の日が年間平均で約百六十日もあることがわかった。 一九八二年七月二十三日、停滞していた梅雨前線に湿った空気が大量に流れ込んで長崎市周辺では記録的な豪雨が発生した。長崎市の隣町である長与町役場では二十三日十九時から二十時までの一時間一八七ミリという、現在でも一時間に降った雨量の日本記録となっている豪雨が降った。この豪雨で長崎市とその周辺では山崩れやがけ崩れ、土石流が発生し、多くの尊い人命と貴重な財産が失われた。 特に人的被害者二百九十九人のうち90%近くはこれら土砂災害による死者・行方不明者であった。このような悲惨な災害から住民一人一人が「自分の命は自分で守る」意識を持ち、近所の人々とお互い助け合うことの重要さが認識された。翌八三年、国は毎年六月を「土砂災害防止月間」と定め、防災情報を共有化するための土砂災害防止キャンペーンを全国的規模で行うこととなった。 雨の降り方が最近変わってきたなと思われる人が多いことであろう。九五年ごろまであまり観測されていなかった時間雨量一〇〇ミリを超す豪雨が、最近では年に数回もアメダス(地域気象観測システム)地点で観測されている。加えて連続した雨量が一、〇〇〇ミリを超えることもしばしばである。このような雨が降ると日本の山はもろい。山が崩れ、地すべりが発生し土砂災害となる。 国土交通省砂防部の調べによると二〇〇六年には土砂災害が全国で千四百四十一件発生、二十五人が亡くなり、多くの家屋や公共施設が破壊されている。しかもこれらの土砂災害は香川県を除く四十六都道府県で発生している。このような自然条件の国に住んでいることを考えると、われわれ人間は自然とうまく付き合うことが必要となる。 発生の事前予測が困難な土砂災害を事例に人と自然の付き合い方を研究している片田敏孝群馬大学教授によると、地域に言い伝えられている伝承や過去の災害時の予兆現象などを知り、防災マップを作成して地域住民全員が協力し合う自主避難体制を作った県内のモデル地域では、明らかに住民の防災に対する自助・共助の意識が上昇したという。 地域のことはそこに住む人々が一番よく知っている。その人々が引き続き安心して地域で生活するために知恵を絞ることの重要性が示唆されたものと考えられる。 今月は土砂災害防止月間である。梅雨期に入るこの機会に自分たちの住んでいる地域のことをもう一度、家族や職場で話し合って、いざという時の災害に対する心構えを確認しておいてはいかがだろうか。 (上毛新聞 2007年6月8日掲載) |