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◎未知なるポテンシャル 二○○七年三月二十八日、中国の広州時刻は現地時間で二十三時、日本とは一時間ほどの時差がある。日付が変わる間際にもかかわらず、広州白雲国際空港に降りると、亜熱帯独特のもわっとした空気に迎えられる。台湾やオーストラリア・ケアンズに降り立った時の、空気が体にまとわりついてくる感覚と似ている。 目的は環境破壊、地域力の衰退、地域間格差が深刻になりつつある湖南省藍山県蒋家村の現地調査である。今回の調査しだいによっては今後、蒋家村に桜を三万本植え、環境保全、地域活性化、日中文化交流をはかるプロジェクトの加速度に影響してくる。とても大事な調査だ。 車で、空港から「…大酒店」と名のついた場所に向かう。「なぜ酒屋に」と思ったら、「…大酒店」と書いて、中国ではホテルの意味がある。片側四車線の右側通行。中心地を外れていたからであろうか、一千万人都市にもかかわらず街灯は少なく、道行く人、行き交う車は意外にまばらだ。明かりのついている家は開け放たれており、テレビ観賞と談笑、そして健康(?)麻雀。湿度は高いが大陸の風はほこりっぽく、日本とは異なるにおい、街のつくりに、異国を意識し始める。建築は、その国そのものだと思う。ホテルの設備は日本と変わらず、熱い湯にゆっくりつかり、そのままベッドに倒れ込む。 三月二十九日、広州は昨夜とはうってかわり、街はとてつもない喧噪(けんそう)に包まれている。東京の喧噪とも異なる。行き交う車の多さ、バイクの多さ、人の多さ。自転車は少ない。目の前でバイク事故が起こる。横断歩道はなく、人は車を「ぬう」ようにして広い道を渡る。 広州駅では、さらに多くの人がいて驚かされる。一瞬でもよそ見をすれば、世界の中心(中華)に一人取り残されかねない。ここでいくら叫んだとしても、だれの耳にも届かないだろう。肌の色は同じでも、言葉の通じない不安感と、一瞬よぎった孤独感に、異国の地にいることを強く意識する。と同時に、膨大な人の数から、混沌(こんとん)とした、莫大(ばくだい)なエネルギーを強烈に感じた。これが、眠れる獅子の未知なるポテンシャルなのかもしれない。 チェン州駅に着く。途中、列車の車窓からちょうど見た風景は、八戸から青森に向かう奥羽本線沿いの景色に似ていた。のどかな風景が続く中、コンスタントに現れる集落、工場、農場。果てしなく広がる平らな土地を想像していたが、丘陵が多かったためであろうか。もう一つ列車の中で印象深かったのは、とにかく交わされる言葉の声が大きかったこと。日本人には、常に口論しているように映る。至って普通の会話を交わしているのだそうだ。 チェン州市内で昼食をとる。どれを食べてもおいしい。中華料理は、ほとんどすべての料理に火を通す。そのため少し脂っぽくなるが、概して日本人の味覚にあう。 (上毛新聞 2007年6月3日掲載) |