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◎プロスポーツ事業 今回は、プロスポーツ事業の枠組みについて記してみたい。本稿まで私は、J2リーグサッカーチームのザスパ草津と、それを運営する株式会社草津温泉フットボールクラブ(以下、KFCと略す)を、比較的あいまいに使い分けてきたが、本来は明確な差がある。 「チーム」には監督、コーチ、選手、トレーナー、ドクター、マネジャー、育成スタッフ、栄養士、調理師などが属しサッカーの活動を担っている。一方、「クラブ」には、チームとは別にフロント組織があり、そこには役職員がいて、事業計画策定、試合運営、広報、営業、商品企画販売、総務経理などを遂行しチーム活動を支えている。一般企業の事業部門と本社機構に似ているが、営業や販売の位置付けなど異なるところもある。そして、この両者の接点にいるのがGM(ゼネラルマネジャー)、強化担当である。 大西忠生前社長の在任中は代表取締役GMとして全責任を担ってチームを作り、監督に委任していた。最下位に沈んだJ初年度のチーム編成は、大西さんのプロサッカーに対する敬意と、選手や地域に対する無限の優しさ、思いを見事に調和させた編成であったが、特に結果が出なかった後は言い訳を一切せず、まさにプロのGMの所作と、感服した記憶がある。 現在では武尾誠社長が組んだ経営計画に基づいて植木繁晴GM兼任監督がチーム編成を手がけている。GMと監督は役割上対立する局面もあり、兼任は矛盾をはらんでいるが、植木さんは、これも見事にプロの仕切りをしている。 この「プロ」の事業と「チームとクラブの並立」は不可分の関係にある。ザスパ草津は、草津町で旅館業を営む飯島啓一氏が平成七年に創設したリエゾン草津という「チーム」を起源とする。これを大西さんがリードして十四年にプロ化を目指した改革に着手し、ザスパ草津と改名して群馬県リーグを戦った。 しかし、ここまでは確かに選手はいて、営業や広報を担当する社員もいたが、正式な契約もなく、残念ながら公的にはフロントとチームの弁別も未熟な完全なアマチュアチームであった。それが十五年二月、猪股有古現相談役や私をはじめとする五人が設立発起人となりKFCを設立させて、選手がプロ契約できる法人クラブができたのである。まさにプロ化が具体化した瞬間であった。 そして、十七年に晴れてJリーグに入り、名実ともにプロチームになったのであるが、そこで突然、大西さんがクラブに厳しく、チームに甘くなった、と思った。ザスパ草津は、選手もフロントも一緒になって荷物運びをし、看板を並べるチームだった。しかし、大西さんはそのような運営環境整備に選手を携わらせることを禁じた。私は多分初めて抗議めいたことを言った。ザスパ草津じゃないと。しかし大西さんは、ニコニコしながら、「プロ選手は、サッカーをすることと、そのために地域と密着する活動をして魅せることに専念すべきであり、クラブはそのための万全の準備をするんだよ」と諭された。まさに、プロのクラブ運営に当たる大西さんのプロフェッショナリズムであった。 (上毛新聞 2007年5月5日掲載) |