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国土交通省高崎河川国道事務所長 前佛 和秀(高崎市栄町)

【略歴】 北海道生まれ。北海道大大学院修了後、1991年度に建設省(現国土交通省)入省。岐阜県、東北地方整備局、本省大臣官房、道路局を経て昨年7月から現職。

総合評価入札方式

◎品質面の競争も促す

 国土交通省は地域の問題課題、これに対する地域の声などを受け、より安全で品質の高い社会資本を整備し、国民に提供する役割を担っています。社会資本を整備するため、公共工事という形で、民間会社に施工を発注・契約しています。高崎河川国道事務所では二〇〇六年度に約九十件の工事を発注しました。

 最近、極端な低価格で落札し、適切な技術力を持たない者が施工する場合が見受けられます。落札率は低い方がよいという声も一方でありますが、この場合、例えば、粗雑工事や工事事故などの工事品質の低下が懸念されます。また、下請け業者などへのしわ寄せや労働条件の悪化なども懸念されます。

 このような状況の中、〇五年に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が制定されました。公共工事は調達時点で品質が確認できる物品の購入とは異なり、施工業者を決めた後、できあがってみないと品質を確認できません。そのため、施工業者の技術力に左右される特性があります。この公共工事の品質特性を踏まえ、個々の工事の内容に応じて適切な技術力を持つ施工業者を選定し、また監督・検査を適切に実施することにより、公共工事の品質を確保することが必要であると考えています。

 この法律制定を受けた取り組みとして、「総合評価落札方式」による入札契約制度の導入があります。これまで価格だけで落札者を決めていましたが、この方式は価格と品質の双方が総合的に優れている者を落札者として決めるものです。単に安いだけが最大の利益とは限りません。例えば、いかに価格を安く抑えたとしても、できあがった施設に欠陥があったり、所要の機能を満たしていなければ公共工事本来の目的を達成できたとは言えません。この方式では、施工会社からさまざまな技術提案を求め、これを審査・評価します。価格だけでなく、品質面での競争を促すことになるため、公共工事自体の品質の向上が期待されます。また、この方式は価格と品質の二つの基準で評価されることになるため、談合による価格合わせでの落札者のコントロールが難しくなり、談合防止に一定の効果があると期待されています。

 欧米でも一九九○年代後半から「価格と性能による競争」に転換しています。現在、この方式への転換を順次図っており、当事務所では二〇〇六年度発注工事件数のうち「総合評価入札方式」が約半数を占めています。

 しかしながら、極端な低入札の傾向は一向に収まる気配が見られない状況にあります。国土交通省としては、必要な対策を講じ、公共工事の品質確保に取り組んでいきたいと考えております。

 また、地方自治体へは手続きの事務量増大や評価方法の設定が困難などを理由に導入が進んでいないと聞いています。普及が進んでいない地方公共団体へも、ノウハウを提供し、協力していきたいと考えています。






(上毛新聞 2007年5月3日掲載)