視点 オピニオン21
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日本産婦人科医会県支部長 佐藤 仁(高崎市竜見町)

【略歴】 岩手医科大卒。医学博士。1971年から産婦人科舘出張佐藤病院長。日本産科婦人科学会代議員。県警察医会理事。

周産期医療の課題

◎出産難民を出さない

 前回の視点(一月十九日付)で日本と群馬県の周産期医療の現状に触れ、いくつかの問題点を指摘し、その一つに今後の周産期医療を維持していくためには現在分娩(ぶんべん)を取り扱っている各地区の有床診療所の存続が必須であることに言及した。

 有床診療所が存続し支援する高次・中核病院が永続するためには、医師の過重労働を解消しなければならない。現在すでに疲労の限界にある医師をつなぎ止めるには、サポートする助産師・看護師の協力が絶対必要である。

 昨年度に群馬県では八十四施設が妊婦の健診を行い、四十七施設が出産を取り扱った。前回の調査より三施設減少した。これらの病院・診療所で一万八千五百六十七人の出産があった。分娩を取り扱う県内十カ所の官公立病院での出産は四千二百五十六人で22・9%、残りの77・1%は民間の病院・診療所での出産であった。また民間を含む病院の出生率は45・7%であり、実に54・3%の出産を有床診療所が扱っていた。

 館林・邑楽地区ではわずか二つの診療所が孤軍奮闘し八百六十人もの出産を取り扱い地域に貢献している。太田地区もハイリスクの妊産婦を引き受ける総合太田病院が25・1%の出産を取り扱ったが、存続に不安がもたれている。また広大な面積を有する利根・吾妻地区も利根中央病院があるのみで28・6%を担い、一部を渋川地区の県立小児医療センターに頼っている。最も充実し群馬大学をはじめ三つの国公立施設を有する前橋地区においても全出産数は四千百六十九人であり、66%は民間病医院が受け持っている。高崎地区では四千三百九十人が出生しているが、国立病院機構高崎病院での出生はわずか2・2%であった。

 今年一月一日現在、群馬県には二百四十四人の助産師が常勤として仕事に励んでいるが、百九十五人(79・9%)が病院勤務である。なお労働基準法を順守するためには四百四十人以上も不足している。

 高崎市医師会は数々の困難を乗り越え、高崎市医師会立助産師学院(定員二十人)を平成二十年度に開校するため準備を進めている。

 このような現状の下に、群馬県で出産難民を出さないためには現在稼働している出産施設の存続が第一である。現実稼働している施設の医師は重過労状態にある。これを助けるのは助産師であるが、絶対数が不足している。またこれを助けるのが看護師である。しかし看護師の助産に対する資格が問題になって制約を受けていた。幸い、三月三十日付で「看護師は分娩期においては、自らの判断で分娩の進行管理を行うことができず、医師または助産師の指示監督の下、診療または助産の補助を担い、産後の看護を行う」と厚生省医政局長通達が出された。

 願わくはこの通達を素直に受け止め、数少ない医師、助産師、看護師らが協力して産婦の看護に当たり、群馬県の周産期医療が壊滅することなく、産婦が安心して出産する場を確保できることを願っている。






(上毛新聞 2007年4月26日掲載)