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◎人材、輸送でメリットも 平成七年の「市町村の合併の特例に関する法律」改正に始まったいわゆる平成の市町村大合併は、地方分権の推進、多様化・高度化する行政課題への対応、厳しい財政状況への対応などのために行われているものである。 とはいえ、うまく話がついて合併したところも多くあるが、話がこじれて合併に至らないという地域も数多く存在している。私の母親が一人暮らしをしている大間々町も町村合併により、みどり市となった。なかなかひらがなの市名に慣れないと言っている友人が多い。 ところで、このような市町村合併の中、防災という視点でも各市町村の担当者は大変苦慮されている。ある防災に関するシンポジウムに参加した時、パネリストである防災担当の市町村職員から一つの課題が示された。市町村合併では行政区域が広がり住民の数が増える。すると行政担当者や住民の防災意識が薄れていくという問題が生ずるというのである。 具体的事例としてある市とある町が合併した問題が提示された。その町の中には日本有数の活火山が存在していて、関係機関や火山と運命を一いつにする町村で協議会を作り、これまで火山防災対策を積極的に実施してきた。 ところが、その町が合併した市は、火山からは遠く離れているため、もちろん防災協議会にも入っていないし、火山防災についての部署もなく、専門の担当者もいなかった。当然ながら防災計画も作り直しが必要となっている。合併後、その新市の行政側の防災体制が作られたが、全体的に防災意識のずれが感じられるという旧町の防災担当者からの声であった。 最近は火山防災に限らず、地震や洪水のハザードマップ作りに取り組んでいる市町村が増えてきた。市町村合併もいろいろな面から検証されるべきであろうが、合併により住民にとって従来の安全のレベルが低下するようでは合併の意義は薄れる。少なくとも人命と財産に直接的に関係する防災体制については、合併後の新体制のもと早急に確立するとともに、広がった区域の住民も含め防災意識を向上させる努力をしていくことが求められる。 一方で、合併により区域が広がり、新しい地域が加わることから、防災上安全な土地が増えていることも事実である。また防災に関係する人材が多くなり得るし、避難場所や避難のための輸送機関が増える例も多い。これらのメリットを有効に生かして具体的な防災対策が実施されることを望んでいる。 いずれにしても市町村合併は負の財産をできるだけ背負わないようにしなくてはいけない。そこで、市町村行政にすべてを押しつけるのではなく、国や都道府県の行政と地域住民の協力と支援により、全国どの場所においても安全な国土が構築されるようみんなで努力していくべきであろう。群馬県下の新市町村でも再度、防災体制・内容を見直し、より安全な街づくりを実施してほしいものである。 (上毛新聞 2007年4月25日掲載) |