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◎歴史ある地を誇りに 国指定史跡の『黒井峯(くろいみね)』遺跡は約千四百年前の古墳時代末期の集落跡です。子持山の裾野(すその)末端に位置する小高い丘がそのまま遺跡となっています。火山噴出物の軽石層の下からたくさんの住居跡、畑、火を噴く榛名山に向く祭壇などが次々発掘されました。何より感動したのは当時の道にじかに手で触れたときでした。とてもすれ違うことなどできない細く曲がりくねった道は、白い軽石の下から黒く湿って現れました。それはつい今し方まで使われていたような固さを保っており、遠い先祖の肌に触れているようでした。 当時の人の気分になり辺りを見回すと、正面にかつて大噴火による被害をもたらした榛名山。奥に雪を被(かぶ)った白根連峰。東に赤城山。背には北風をもたらす子持山。そして南に吾妻川と利根川が合流し関東平野が始まります。山紫水明、つくづくよい環境と思います。 食事時の方には失礼ですが、私には親父(おやじ)のおならの記憶があります。若いときの記憶ですが、それは軽い音の、軽い臭(にお)いの健康そうなものでした。時がたって、その臭いを自分のものに発見したときは実に驚き、命のこと、生き方のことなどいろいろ考えさせられました。 この土地の水を飲み、この地で採れた物を食べ、この地の自然とともにつないできた命。歴史あるこの地に生を受けたことを誇りに思うと同時に、子供のころから外来文化にあこがれ、また東京にあこがれ、田舎生まれを恥じていた時期があったことを恥ずかしく思います。 そんな故郷を見直すきっかけが俳句でした。俳句に携わる前は実は若葉にも紅葉にも特に関心がなく、俳句を通じて自然に接するようになってようやく自然の美しさ、面白さに気がついた次第です。遅ればせながら自然を見つめ直す意味で大変ありがたい出合いだったと思っています。 俳句で楽しいのは吟行(ぎんこう)といって屋外に出て、自然の風物に触れ、季題を探して俳句を作ることです。雪月花(せつげつか)に四季の移ろいを見、感動を俳句(五・七・五)にするのです。残念に思うのは、誰にでも楽しめる日本の詩のはずが、誘ってみるとよく「難しい…」「できない…」と敬遠されることです。 世界に誇る素晴らしい日本の自然。そしてそれを愛(め)でる俳句。ともに引き継ぎ、子孫に残さねばなりません。経済的、物質的なものより、精神的な豊かさを考え直す時代が来ていると信じます。 最近うれしいことは、新聞紙上で児童生徒の方々の俳句を拝見することです。指導してくれる先生方に敬意を表すとともに、郷土の自然を詠(うた)う若い俳句作者を頼もしく思い、大きくエールを送ります。 四季折々、黒井峯から見る榛名山に沈む夕日、夕焼けは殊に美しく、「おじさん」の心を奪います。黒井峯遺跡に隣接して中学校があり、この地の未来を背負う生徒が学んでいます。「おじさん」は、その黒井峯の高台から見た夕焼けを忘れず、誇りに思って育ってほしいと願っています。 (上毛新聞 2007年4月23日掲載) |