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◎物好きの遊び心が必要 昨年十二月二十三日付と二月二十五日付の本欄で、梅淋塾が梅田倶楽部に発展し、やがて「よろずや余之助」という活動拠点ができ上がったことを書いた。これからはこの余之助の活動を軸に話を進めていこう。 余之助にはいくつかの顔がある。いったい何屋なのかと聞かれると「よろずやである」と答えてしまう。できることは何にでも手を出し、面白いことや楽しいことは何でもやる。この精神がよろずやたるゆえんであろう。 この事業の中核を担っているのが、おとなの溜(た)まり場なるコンセプトの基に運営されている余之助茶屋である。いわゆる喫茶店ではあるが、物好き連中のやることゆえ、ただの喫茶店ではない。 中をのぞくと、そのほとんどは地元の中高年の人たちである。ランチタイムこそ近辺の勤め人たちでにぎわうが、普段は地域のおばちゃん、おじちゃんたちの屈託ないおしゃべりや、さまざまな活動の拠点になっている。 例えば手芸好きのグループがおしゃべりを楽しみつつ作った作品や、絵画・工芸品の展示あり、ジャズやオカリナなどのコンサートあり、歌声喫茶あり、グラウンドゴルフ大会あり、実に多彩である。しかも参加者たちはみな大層元気であり、七十歳代では年寄り扱いなどしてもらえない。 今の時代は、他人同士が気楽に会話を楽しむ、交流の場が少なすぎるのではないだろうか。 余之助に集う人たちを見ていると、特に団塊世代以降の人たちに、会話の苦手な人が多いことに気付く。いわゆるしゃれた言葉のキャッチボールがうまくできないのである。 これでは彼らがリタイアした後、家庭内はもちろんのこと、地域で活動しようと考えても、苦労するであろうことは容易に想像できる。では地域に気楽な交流の場は本当にないのだろうか。 幾つかの公共施設をのぞいてみると、確かに各施設ともきれいで設備もよく、静かな落ち着いた雰囲気である。そこでは勉強にしろ、グループ活動にしろ、明確な目的をもった人たちが利用するには確かに素晴らしい環境であるようだ。しかし、ただぶらりと立ち寄り、世間話に打ち興じつつ地域情報を得る雰囲気など、残念ながら感じられない。 団塊世代は、まず地域に溶け込むことから始めなければならないが、その大半は群れを好まないだろう。彼らがしゃれたおしゃべりを楽しみ、地域活動への意欲を感じさせる場を提供するためには、これらのハードルに加え、行政では持ち得ない市民活動家の心意気が必要になろう。それにはその気にさせる仕掛けと、スムーズにことを運ぶ潤滑油がなくてはならない。その仕掛けには物好きの遊び心が必要であり、潤滑油とは営業センスにほかならない。 (上毛新聞 2007年4月19日掲載) |