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◎感性の豊かさを実感 オーストリアのカール・オルフ研究所で「こどものための音楽 音・ことば・うごき」を学んだ経験を二回(二月二十六日付、昨年十二月二十八日付)書かせていただいた。つづきを書こう。 現場で活躍している人が講師になって教えてくれる授業もあった。たいていがここの卒業生。私はその中の、「赤ちゃんのための音楽」「高齢者の方のための音楽」「障害のある方のための音楽」をとった。 フィンランドから来た先生の『赤ちゃんのための音楽』は、初めての分野でもあり、とても新鮮だった。半期の授業が終わって、もっと実際の赤ちゃんのいる現場を見たくなった。 そこで前期後期の間の休みを利用して同級生七人とヘルシンキに行った。 行ったのは二月。寒かった! こんな中でもまるまる洋服を着込んだ赤ちゃんが雪の中、乳母車に乗って『赤ちゃんとお母さんの音遊び』教室にやってくる。ここは、ギャラリーの二階。五、六人の赤ちゃんが腕の中で揺らされながらお母さんたちの歌を聞いたり、楽器をたたいたり(もちろん自由に)。ここに来るのは、小さい子は三カ月から大きい子は三歳近くまで。それぞれのグループの時間に次々やってくる。 その場にいると外は寒いのに、なんだかやわらかくて温かい気分になってくるのだ。赤ちゃんとお母さんの(もちろんパパやおばあちゃんと来る子もいる)笑い声とここの教室をやっている講師のエベの人柄のせいだ。 ゆったりと時間が流れていく。「親子のいい時間は、赤ちゃんの無意識の中にちゃんと残っていく」と、『赤ちゃんのための音楽』の授業でフィンランドから来た講師のソイリーが言ったのを思い出す。 面白かったのは、二階から時々下に下りてギャラリーの中で赤ちゃんの遊びをやったことだ。ギャラリーに展示されている鳥の彫塑は、下の部分が池のようになっていたのだけれど、その水にエベが息を吹きかけ、その音を聞かせ、水にできた輪の波紋を赤ちゃんに見せた。鮮やかな黄色や赤の花の絵の前では、花の歌を歌いながら踊った。芸術家の作った音のない海や川の映像には、エベが即興で声で音楽をつけたりした。 思ってもみなかった赤ちゃんと芸術作品の組み合わせ。しかし不思議なほどすんなりと受けとめることができた。そして思った。エベは、本物を赤ちゃんに届けようとしているのだと。決して赤ちゃんだから子供だからといった目でみていない。『子供だまし』ではないのだ。「赤ちゃんは、言葉がわからなくても『詩』の意味を理解する」とソイリーが授業で言った。そうなのだ。赤ちゃんは、豊かな感性を持っている。 私は今、「えほんのへや『あひるのこ』」の中で、赤ちゃんに絵本を読んだり、わらベ歌で遊んだりしている。その中で赤ちゃんの感性の豊かさを実感している。エベのように赤ちゃんに本物を届けたい。 (上毛新聞 2007年4月18日掲載) |